うまくいっていないカップルの特徴
互いの会話では、まず自分の表情は相手によって読まれて、その反応を手掛かりにして、コミュニケ―ションは進む。言い換えれば、相手のわずかな表情の変化を感知して、次の自身の対応を決めていく。自分と相手の顔が鏡のように互いに映しあっているので、女性は後ろ姿しか見えませんが、女性の表情もだいたいは想像がつくのです。
もし相手が覆面や仮面で顔が見えなかったら、会話はスムーズに成立しにくいでしょう。横溝正史の『八つ墓村』などの推理小説で仮面をかぶった人物が登場するのも、不気味さを強調して、円滑なコミュニケーションができない存在にするためでしょう。意思疎通においては、表情は本当に饒舌なのです。
毎週数組のお見合いを観察するうちに、うまくいっているカップルと、そうでないカップルの違いが、明らかに読み取れるようになりました。
30分たっても、終始、無表情、仏頂面のまま座っている男性の顔が気になることがありました。その理由を想像してみると、相手が何らかの理由で自分の存在を認めたくないケース(例えば、事前の紹介書の内容と現実が全く違うと不満を持っている、など)があるかもしれません。
ただ、私自身は、男性または女性がコミュニケーションが得意ではないケースが多いのではないかと感じました。意思疎通を図りたいが、関心を持っている表情を出せなかったり、相手の無反応を受けて立ち往生したり、そもそも異性と話すのが得意でなかったり、笑顔を示したくてもできない不器用な人が少なくないのではないかと感じていました。
初対面の人の対話という意味では、採用面接にも近い。もし同時に何組もの採用場面の表情の変化を一覧できれば、効率的な採用ができるかもしれないと、観察しながら奇妙な発想も生まれました。採用面接の場合は、会社側はコミュニケーションに長けた社員を配置していますが、お見合いの場面では二人ともそうでない場合もあるでしょう。