トランプ関税ショックの影響で、株式市場が大きく揺れ動いている。「今、売るべきか?」「いや、むしろ買い時なのか?」と迷う投資家も多いのではないだろうか。
個人投資家の間で大きな支持を集めるのが『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60題のクイズを通じて「チャートの読み方」を学ぶことができる。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。本稿では、窪田氏に「底入れのシグナル」をテーマに話を聞いた。(※この取材は2025年4月11日に行ったものです。構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

日経平均乱高下、株で儲ける人は「底入れシグナル」を見逃さない日経平均株価の週足チャート(チャートはTradingViewより提供)

日経平均のチャートに注目

―― 窪田さんは、今の相場をどのように見ていますか?

窪田真之(以下、窪田):トランプ関税ショックの影響もあって混乱の渦中にあります。しばらくは乱高下の展開が続くでしょう。

 ですが、4月第2週の日経平均の週足チャートには、注目に値するシグナルが現れました。

日経平均乱高下、株で儲ける人は「底入れシグナル」を見逃さない日経平均株価の週足チャート(チャートはTradingViewより提供)

 4月第2週の週足チャートには、「長い下ヒゲをつけた陽線」が出現しています。

 これは非常に重要なテクニカルのシグナルです。

 ちなみに昨年の8月、令和のブラックマンデーの週にも、このような長い下ヒゲをつけたチャートが出ています。

―― この「長い下ヒゲ」は何を表しているのでしょうか?

窪田:この「長い下ヒゲ」の動きを直感的に理解してもらうために、『株トレ』からクイズを用意しました。

 次のクイズに挑戦してみてください。

『株トレ』のクイズにチャレンジ

 5週前、あなたはM社とN社の株を100株ずつ(株価1000円)購入しました。

 ところが、急に資金が必要になり、どちらか一方を手放さなければなりません。

 現在の週足チャートは次の通りです。

 M社とN社、売るならどっち?

M社とN社、売るならどっち?M社とN社、売るならどっち?

クイズの正解は…

 売るなら、M社。

M社は上昇の勢いが失われた可能性あり

―― なぜM社を売りと判断するのでしょうか?

窪田:M社の週足チャートは「長い上ヒゲをつけた陰線」です。

 長い上ヒゲを出したところで売買高が急増しているのが問題です。

 直前まで4週連続で上昇していたM社を見て、買い手が調子に乗って高値で大量に買ったところで、突然、売りが急増してドスンと落とされたことがわかります。

 こうなると買い手はこれ以上買うのが怖くなります。高値で買ってしまった投資家はあわてて損切りするかもしれません。

N社は「底打ち」の可能性も

―― では、N社のように下ヒゲが長い場合は、どのように判断すればよいのでしょうか?

窪田:N社のチャートは、「長い下ヒゲをつけた陽線」です。

 これは、いったん大きく売られた後、勢いよく買いが入って急反発した状況を表します。

 長い下ヒゲのところで売買高が急増しています。下げ続けるN社に耐えられなくなった投資家が、安値で大量に売ってしまった後、急に買いが増えて、急反発したところであることがわかります。

 こうした長い下ヒゲのローソク足は、「底入れのシグナル」として注目すべきポイントです。

日経平均にも同様のシグナルが出ている

―― 4月第2週の日経平均のチャートも、N社と同じようなシグナルだということでしょうか?

窪田:そうですね。4月第2週の日経平均週足チャートにも、「長い下ヒゲをつけた陽線」が出現しました。

 もちろん、1本の下ヒゲだけで「底入れ」と断定することはできません。ただ、相場の変化を示すシグナルとして注目に値します。

 チャートは、今の相場の動きを可視化するツールです。

 ファンダメンタルズを分析することも重要ですが、特に相場の転換点では、市場で起きていることをいち早く察知するために、チャートの観察は欠かせません。