
プロジェクトの成功は、リーダーの“心の安定”にかかっている。人材育成やリーダーシップに関する研修を行う吉田幸弘氏のもとには、チームメンバーとの関係に悩むリーダーからの相談も寄せられるという。メンバーを信頼しきれず、すべての仕事を引き受ける負けず嫌いなリーダー、Lさんに足りない“視点”とは?※本稿は、吉田幸弘『仕事が速いリーダー 仕事に追われるリーダーの時間の使い方』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。
負けず嫌いで他人を頼れず
仕事に追われるリーダー
負けず嫌いのリーダーLさんは、同僚のリーダーや他のチームに勝っていないといけないと、常に成績を意識している人でした。
負けないために、自己研鑽にも励み、自分の仕事以外の知識も貪欲に習得しようと心がけていたのですが、いつからか、その負けず嫌いが部下に対しても働くようになってしまいました。
「部下に負けられない」「部下にバカにされたくない」といった思いにとらわれ、「負けないため」「バカにされないため」に部下やメンバーを頼ったり、仕事を任せたりすることができなくなり、どんどん仕事に追われるようになってしまいました。
一方、仕事が速いリーダーMさんは、部下やメンバー、他チームの同僚の力を借りて仕事を回していました。Mさんができることであっても、部下に力を借りることもありました。
Mさんのチームには、「人に負けるのが大嫌い!」という部下がいました。その部下は、後輩に負けるのはもちろんのこと、同僚であっても上司であっても対抗意識を燃やし、同じチームなのにメンバー全員を「敵」と捉えて、攻撃をしてくる状況です。
Mさんにも、毎日のように「そんなこともできないのですか」などと強い言葉をぶつけ、攻撃してきていたのですが、Mさんは勝負の土俵に上がることはしませんでした。「勝手に言わせておけばいい」と、あえて「鈍感」でいようとしたのです。
どのように「鈍感」を貫いたのか、見ていきましょう。
部下の大口顧客獲得は
リーダーのデメリット?
1 勝負せずに相手をリスペクトする
相手が理論武装して「そんなことも知らないんですか」「私は対策をしっかり進めているのに、他の人ができていないのはリーダーがまずいのではないですか」などとマウンティングしてきた場合は、「そうなんですね。情報を教えてくれてありがとうございます」「勉強になりました。助かりました」などと、まずは相手に感謝の気持ちを示しましょう。
そうすることで、相手は「自分は必要とされているんだな」と承認欲求が満たされ、どんどん意見を出してくれるようになります。