これを可能にしたのがJR西日本の特殊な立ち位置だ。前述の通り、現行の全国共通ICカードはSuicaから始まったが、2番手のICOCA、3番手のPASMOのみが独自開発だったのに対し、以降はSuicaの仕組みを流用しているという。
独自開発といってもICOCA、PASMOは同じ仕様で作られているため互換性があり、利用者の視点で違いはないが、システムを独自で組み上げた経験がカスタマイズの自由度に直結している。また、リーダ・ライタ端末についても、グループ会社のJR西日本テクシアが当初からOEM生産している。
こうしたノウハウを活かして開発し、2025年1月から提供を開始したICOCA Web定期券サービス「iCOMPASS」は、簡易型ICOCAを後押しするキラーコンテンツになった。特に刺さったのがバス事業者だった。経営が厳しい上、人手不足の現状ではバスの定期券売り場の増設は難しい。iCONPASSは「こうした切実な課題をネット販売で解決できないかというところからスタートし、実際にウケた」という。
ICOCAに「乗った」
JR東海とJR九州
ここで一旦、iCONPASSの仕組みを整理しておこう。全国共通ICは1種類のバス定期券が搭載できるようになっている(バス事業者が参加していないカードは非対応)が、定期券情報をカードに書き込む必要があるため、定期券売り場や券売機に行かなければならない。
それに対してiCONPASSは購入時、専用サイトで保有するICOCAカードの固有IDを入力する。利用時は端末にタッチしたカードのIDが定期券に紐づけられているかセンターサーバーに照会する仕組みのためネット上で完結する。標準機能のバス定期券は1枚分の記録容量しかないが、iCONPASSであればICOCAに最大5枚の定期券を紐づけ可能だ。
JR西日本の「ICOCA輸出」は新たな段階に入ろうとしている。モバイルICOCAのシステムを活用し、JR東海が2026年春に「モバイルTOICA」、JR九州が2027年春に「モバイルSUGOCA」を導入すると3月7日に発表したのである。