「そうはスーパーが買わない」
「そうはプラットフォームが勧めない」

 戦後復興から高度経済成長期にかけて、消費社会が大きく花開いたことで、小売業の中心形態として登場したのが「スーパーマーケット」である。

 全国にチェーン展開するスーパーは、大量仕入れによってコストを抑え、安い価格で商品を消費者に提供するというビジネスモデルを確立した。この結果、伝統的な問屋が担っていた「流通量・価格決定の支配力」が、今度はスーパーの側に移る場面が増えた。

 スーパーは棚割りや発注ロットの大小をコントロールできるため、商品メーカーや卸売会社が「ぜひうちの商品を置いてください」と頼む立場になった。つまり、商品を大量に売りたいならスーパーの基準をクリアしなければいけないが、そう簡単に全てが通るわけではない。

 実際にそのように言われるかどうかはともかく、「スーパーの都合や基準、販促計画に合わない限り、大量に仕入れてもらうことは難しい」という意味で、現実として「そうはスーパーが買わない」という事態がいたるところで起こっていただろう。もちろん、スーパーマーケットは全国各地でまだ存在感を示している以上、現在でも、そのような状況にあるといえる。

 さらに時代が進み、インターネットの普及とともに電子商取引(EC)が急速に広まると、アマゾンや楽天などのECプラットフォーム、あるいはYouTubeやNetflixのようなコンテンツプラットフォームが大きな力を持ちはじめた。

 これらプラットフォームでは、商品やコンテンツを世界中のユーザーに届けられる半面、検索結果やレコメンドのアルゴリズムがユーザーの目に触れる商品を事実上決めてしまう。

 つまり、どんなに品質が優れていても、プラットフォーム上の評価や検索順位が低ければ埋もれてしまい、大きな利益を得るのは難しい。この状況は、「そうはプラットフォームが勧めない」と表現するとわかりやすい。

 プラットフォームの方針やアルゴリズムの変化一つで、売れ筋や視聴数が大きく変わるため、多くの事業者やクリエイターはプラットフォームの動向に敏感にならざるを得ない。ここでも「物事はそう簡単にうまくはいかない」構造が繰り返されているわけだ。