「そうはAIが動かない」
時代がやってきた!?
現在、AI技術が飛躍的に発展し、大規模言語モデル(LLM)をはじめとする高度なAIシステムが、私たちの日常やビジネスに採り入れられつつある。
チャットボットとして会話に応じたり、タスクを自動化して進めてくれたりする「AIエージェント」の活用は、まさに次の段階の産業革命ともいえる動きだ。こうしたAIエージェントは、ユーザーの指示を受けたり、独自に判断して最適な行動を提案したりする能力を持っている。
ただし、だからといって「AIエージェントが人間の望みを全て叶えてくれる」というわけではない。
AIエージェントは与えられたデータやアルゴリズムのパラメータに従い、そこに制約やバイアスが入り込む可能性が常に存在する。さらに、開発企業やプラットフォーム側が定めた利用規約やポリシーによって、実行できる行動や提供できる情報に制限が加えられる場合もある。
このように、AIエージェントは非常に高度な補佐役になり得る一方、その背景には制御の仕組みやアルゴリズム設計者の意図、データの性質といった多くの要素が複雑に絡み合って存在している。
そのため、ユーザーが「こうしてほしい」と望んでも、AIエージェント自身が「それはできない」と判断したり、設計上の理由で実行をブロックしたりすることがある。いわば「そうはAIが動かない」という状況が、未来においては珍しくなくなるはずだ。
これは問屋やスーパー、プラットフォームが示してきた「物事が自分の思惑通りに運ぶとは限らない」という問題の新しいバージョンといえる。
AIに何でも頼めるからといって、全てが思い通りにいく保証はない。それゆえ、今後はAI技術の発展に合わせて、個人や企業がAIエージェントとの付き合い方を学び、必要に応じて微調整しながら活用していくことが求められるだろう。
時代は変わるが
言葉はもう少し長く生き残る
こうして振り返ってみると、「そうは問屋が卸さない」という言葉が、もともとは江戸時代の問屋制度を前提にした商取引上の力学を示すものでありながら、主体が変化してもなお使われ続けてきた背景には「自分の望むようにはいかない」という普遍性があるからだといえそうだ。