欠勤が続くAを、上司が心配し……
翌週の月曜日。仕事を終えて帰宅したAは、夕飯を済ませシャワーを浴びた後、いつものように夜中じゅうゲームを楽しんだ。明け方4時過ぎにベッドにもぐりこみ、目が覚めた時には8時50分。会社は9時始業なので、通勤時間から逆算すると7時40分には自宅を出ないと間に合わない。あわてて飛び起きたAはB課長に「あのう、会社休みます」と電話すると再び眠りに落ちた。
夜通しゲームに熱中するあまり、早起きができなくなったAは、その週の木曜日も休み、その次の週は月曜日と水曜日に欠勤。休みの多さを心配したB課長は、木曜に出勤してきたAを捕まえた。
「営業課に来てからまだ2週間もたっていないのに、4日も休むなんて、どうしたの?」
Aは下を向いたまま黙っていた。まさかゲームのしすぎで朝寝坊をしたとは言えない。B課長は心配そうにAの顔を覗き込んだ。
「もし体調が悪いのなら、今から早退して病院で診てもらいなさい。それとも仕事が原因?遠慮なく話してみてよ」
「それって話さないとダメですか?」
「当然だよ。ここは学校じゃない。毎回、『今日は休みます』とだけ言われてもねぇ……勝手な理由で休まれては困るからね」
しかし次の週もAは2日間欠勤した。理由を聞いても口をつぐんだままのAに手を焼いたB課長は、仕方なくC部長にその旨を報告した。
「会社を休むにはそれなりの理由が必要」「休むのに理由は要らないはず」
4月下旬の月曜日。C部長はAを呼んだ。
「B課長から聞いたけど、君はたまに無断で会社を休んでいるそうだね」
「無断じゃありません。始業時間前までにはB課長に連絡してます」
「わかった。じゃあ、なぜ休むのか理由を教えてほしい」
「どんな理由で休もうが自由でしょう?」
Aの返答にあきれたC部長はため息をついた。
「あのね、会社を休むにはそれなりの理由が必要なの。理由が言えないんじゃ無断欠勤だよ。休んだ日の給料は出ないから、月給からその分をカットするけどいいの?」
「じゃあ、休んだ日は有休にしてください。有休の日の給料はカットされないし、休む理由を話す必要もないって、新入社員研修の時、C部長が説明してくれましたよね」
甲社の有休付与基準日は4月1日で、この日に入社した正社員にも10日の有休が付与される。有休の申請は前日までにすることと就業規則には定めているが、実態は社員が病気やケガなどで休んだ場合、後日会社と本人の双方が認めれば有休に振り替えることもある。Aの場合は仕事をサボるために休んでいるかもしれず、現状では振替に応じたくないとC部長は思っていた。
2人の言い争いはしばらくの間続いた。Aがその場を去った後、疲れ果てたC部長はソファに倒れこむように腰かけた。
「これは困った。どうすればいいかD社労士に相談しよう」