「はい。労働契約上の労働日に欠勤する場合、その日の契約が履行されません。だからAさんは欠勤する場合、会社に対して理由を説明する必要があります」

「やっぱり……。もしこんな態度を続けるようなら、試用期間中でも会社を辞めてもらうのは仕方がないですね」

【試用期間中の欠勤について:Aの場合】

・試用期間中の社員については、適性や能力を見極める期間であり、通常「解約権留保付労働契約」として扱われる。不適格と判断した場合は契約解除の権利を留保しているが、解雇には試用期間中なりに「客観的にみて合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であり、この立証義務が免除されるわけではない。
 

・Aのケースでは、週に2日欠勤している(労働契約違反)ことや、欠勤理由を上司に答えない(命令義務違反)ことから、就業規則に基づいての懲戒処分や解雇が考えられるかもしれない。しかしAは入社から1カ月以内の試用期間中であり、社会人経験が少ない新卒社員への教育責任がある。現時点ではじゅうぶんな教育をしているとは言えず、処分は無効になる可能性が高い。

「Aさんは、理由が不明のまま欠勤を繰り返した場合、労働契約違反により自分の人事評価が下がること、懲戒処分や普通解雇になる可能性があることを知らないと思われます。まずは就業規則に則り、説明することが大切です」

「わかりました。もう一つ質問があります。A君の要求通り欠勤した日を有休に振り替えなくてはいけませんか?」

【欠勤した後、年次有給休暇(有休)に振り替えることはできるか】
・欠勤日は原則「ノーワーク ノーペイ」である。

・有休を付与する目的は、労働者が心身をリフレッシュし、生活の質を向上させることで生産性を維持・向上するためである。

・上記の理由で、有休は原則労働者からの事前申請により付与される(申請する際、取得理由を伝える義務はない)が、実務的には病気やケガなど特別な事情の場合、事後申請(欠勤を有休に振り替えること)を可能としている会社もある。

・ただし欠勤を有休に振り替える場合、本人の申請と会社の承認が必要。Aの例では、本人が有休を申請しても会社が認めなければ欠勤扱いとなる。

「欠勤理由がわからない以上、今の段階では有休への振替は認めません。でも、どうして頑なに理由を言わないのかなあ……」