彼女は東京の一等地にあるマンションに住んでいましたが、部屋までノーチェックで行けました。ピンポンするとドアが開き、本人が顔を出しました。それも、ほとんど透けるようなネグリジェにカーディガンという出で立ちです。

 たぶん、お相手が帰宅したのだと勘違いして出てきたのでしょうが、そこには見ず知らずの若い男が立っています。私は私で、女優(だけではありませんが)のこんな姿は見たことがないので、シドロモドロで取材の趣旨を伝えると「事務所を通してください」とドアを必死で閉めようとします。

 事件取材ならドアを閉めさせないよう足を挟むのが当時の鉄則ですが、この場合は不法侵入、痴漢扱いの可能性大。帰社して失態を謝りましたが、編集長は鷹揚で、「男が悪いんだから見送るか」でおしまい。「文春砲」で鳴らす今の文春の記者が聞いたら怒りそうですが、私は記事にならなくて安心しました。男女の事情は深く取材しないとわからないもの。どちらが悪いと即断するのも傲慢だからです。

肉体派ではなく華奢だった
色気に圧倒されたワンピース姿

 大昔の記憶を手繰り寄せると、一瞬の遭遇も含めれば、さまざまな女優さんたちと出会ったことを思い起こします。

 たとえば、色気に圧倒された太地喜和子さん。私生活で三國連太郎さん、中村勘三郎さん、尾上菊五郎さんといった大物とのロマンスで騒がれたお色気女優とは、『月刊文春』の座談会で会いました。それはフランス料理店の個室で行われ、出席者4人中、男性は私だけ。隣が太地さんで光栄な場所でしたが、座談会のテーマは当時大ヒットした洋画『危険な情事』について。

 太地さんの衣装は金色のワンピース姿です。想像していた肉体派ではなく、華奢な人だったことは覚えていますが、問題はその衣装でした。