朝、スマホのアラームで目を覚ましたらそのままSNSを巡回して、通勤時間もSNSを見て、日中も気がついたらSNSを見ていて、夜はショート動画をだらだら見ながら寝落ちする……そのままでは、まったく無価値なものに人生のどれだけの時間が奪われてしまうだろうか? いまこそ、むやみに時間を浪費する毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する一点集中の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』より、「スマホ依存」から脱する方法の一部を紹介する。

人生は結局「スマホ依存」を抜け出せるかにかかっている。頭のいい人はどうしている?Photo: Adobe Stock

その1:スマホの「アラーム」で起きるのをやめる

 私たちは、多機能デバイスの世界に暮らしている。とくにスマートフォン――いわば現代版の十徳ナイフ――には機能が満載されている。1台の電話が、カメラ、目覚まし時計、地図、おまけに懐中電灯の役割まではたすようになると、20年前にだれが想像しただろう?

 複数の道具がはたす機能が、たった1つのデバイスに集約されているのだ。そして、それこそがスマートフォンの利点であることは、世間に広く認められている。そこには欠点などなにひとつないように見える。

 だがこんな光景を思い浮かべてもらいたい。

 多忙をきわめた1日がようやく終わろうとしている。あなたは就寝の準備をととのえている。目を閉じる寸前、あなたは翌朝にそなえ、アラーム時刻をセットしていなかったことを思いだし、スマホを手にとる。すると、思わぬことに3通もメールがたまっていたことがわかる。

 このちょっとした行為が、不眠を招く。

 世界各国の睡眠の専門家は、就寝前には平穏で静かな時間を設け、気持ちよく睡眠へと移行できるようにすべきだと提言している。

 読者のみなさんもこれまでに、本を読んでいたら自然と眠くなり、まどろんでしまった経験がおありだろう。ところがルールを設けることなく、むやみにデバイスを使いつづけていると、心は穏やかになるどころか、どんどんささくれだっていく

 私は以前、目覚まし時計を使っていた。それも、複数の目覚まし時計を使わなければ、目が覚めなかった。だが、ある時期から、スマホのアラーム機能を使うようになった。なによりありがたかったのは、出張の荷物が減ったことだ!

 だが、それと同時に、私の1日は「ツイート(ポスト)」「メッセージ」「メール」の猛攻撃で始まるようになった。

 深夜だって油断はできない。うっかり真夜中にスマホのほうをちらりと見てしまい、つい、ストレス満載のメッセージを読んでしまったら?

 ふたたび至福の眠りに落ちるのはまず無理だ。

その2:「メモ」は紙にする

 また一時期、スーパーにでかける際、買い物リストをスマホの「メモ」機能に書き留めていたこともある。そうすれば、いつでも買うべきモノを書き足せるし、メモを忘れてスーパーにでかけることもない。スマホなら肌身離さずもち歩いているからだ。

 ところが、やはりここにも落とし穴があった。スーパーでカートを押しながら歩いている最中にも、クライアントからの電話やメールに気づいたり、インスタグラムを見たりするようになったのだ。おまけに、小さな画面に目をこらし、うつむきながら歩くようになってしまった。

 もちろん、コンピュータには心から感謝している。コンピュータのおかげで、ワープロ時代より格段に編集作業が楽になった。だがその一方で、インターネットが「もっと見たい」という欲求をひっきりなしにかきたててくる

 以前、「ニューヨーカー」誌にこんな風刺漫画が掲載されていたことがある。ひとりの男がパソコンを眺めている。ポップアップ画面には「インターネットはあなたの能力を低下させることを望んでいます。どうしますか?」と書いてある。クリックするオプションは1つしかない――「つねに許可する」。

その3:「タイマー」をストップウォッチに変える

 私は、自分がスピーチをするときは「お手元のデバイスをサイレントモードにしてください」と頼むことにしている。どうしてもメールなどを打たなければならない場合は、いったん退席し、室外で用事をすませてもらう。そうすれば出席者全員と共有する空間を邪魔されずにすむからだ。

 事前にこう頼めば、出席者はたいていスマホをしまってくれる。すると、ときには数百人もの出席者が、同じ空間にいる相手の言葉に集中しはじめる。そうした光景を見るのは、じつに気持ちがいいものだ。

 そのいっぽうで、私はスピーチの内容に工夫をこらし、ワークを組み込むなど、出席者が何らかのかたちで活動に参加できるようにしている。

 そうした場で時間配分が必要な場合、スマホのタイマー機能を使うのが便利だ。

 だがこれでは利害の対立が生じてしまう! スマホのタイマー機能を使うことで、スマホのほかの機能ともつながってしまうからだ。

 幸い、この問題は簡単に解決できた。昔ながらのストップウォッチをさがしだし、首から紐でぶらさげることにしたのだ。これが案外、オシャレだった。

 読者のみなさんも、スマホの代わりにストップウォッチや目覚まし時計を使ってみてはいかがだろう? いまではすっきりしたデザインのものも多く、出張用の薄型の目覚ましなどもある。

 私たちの脳は、簡単に脱線したり、横道にそれていったりする。だから、買い物にでかける前には、買うべきモノのリストを紙に書き留めておこう。あるいは、プリントアウトしてもいい。

 また、パソコンで細かい作業をするときには、ネットとの接続を遮断し、目の前の作業に集中しよう

(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』からの抜粋です)