トランプ関税で再編とリストラが加速へ
中国メーカーの台頭に加えて、自動車産業はトランプ関税リスクにも直面している。高関税政策には不透明な点が目立つものの、自動車関連企業は対応策としてサプライチェーンの再編を急がなければならない。
最近の例では、スウェーデンのボルボ(親会社は中国の浙江吉利)が、米国のトラック組み立て工場の従業員を最大800人リストラすると明らかにした。トランプ関税によるサプライチェーン再編の負担で、コストカットを急ぐ企業が他業種でも増えるはずだ。
コストカットを進めながら収益力を維持するには、経営体力が求められる。主にどこの市場を狙うか、戦略はどうするか、企業は重要な経営判断に迫られている。特に自動車の場合、乗用車と商用車の顧客は同じではなく、ビジネスモデルは異なる。
乗用車事業では、一般ユーザーの好みに合わせて多種多様な車種を提供することが必要だ。コンパクトカー、セダン、SUV(スポーツタイプ多目的車)、ミニバンなど、モデルは幅広い。ブランドにもよるが、低価格から高価格帯まで価格幅は広い。EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド車)、ソフトウエア拡充なども重要だ。
一方、商用車事業ではクルマを嗜好(しこう)品として捉えることはほとんどない。それよりも価格を抑え、先端技術を実用化して輸送の効率化に貢献する方がより重要になる。
こうした性格の異なる製品を、同じようなビジネスモデルで事業運営することは難しい。トヨタでさえ容易なことではないだろう。海外の有力メーカーも危機感を募らせているに違いない。
4月下旬、独メルセデス・ベンツグループは、小型のミニバンと小型商用車から撤退すると報じられた。26年6月に新車の生産を終了するという。撤退に合わせて仏ルノーとの提携は解消するようだ。自動車業界の再編は間違いなく加速している。