スロットで稼いで給油も?LA住民が3時間かけて通う“砂漠の激安スタンド”の正体【現地取材】車は一方向からしか入れない独特な仕組みになっている

向かいには
リゾート&スパ施設

 さらに、このガソリンスタンドの向かいには、同トライブが運営する大型カジノを有するリゾート&スパ施設があり、そこでも同じポイントカードが使える仕組みだ。

「今度またここに来たら、向いのカジノ・リゾートにもちょっと寄って、レストランで食事でもしていこうかな」と言う客もいた。

 安価なガソリンで客を引き寄せ、居留地内に留まらせ、レジャー消費させる導線づくりが実に上手い。

 ひとり一台車を所有するのが当たり前の車社会で、高速道路の料金が日本ほどかからないアメリカだからこそのビジネスモデルとも言えよう。

 インディアン・ゲーミング・マガジンの2023年の調査では、カリフォルニア州内のネイティブ・アメリカンのトライブが所有するカジノに隣接したガソリンスタンドは36店舗ある。

 物価高騰の中、消費者からの要望を受けて、さらなるガソリンスタンドの建設が州内のネイティブ居留地内で進んでいる。

「ギャンブルはしないし、リゾート内のスパにも用はないけど、安いガソリンスタンドは家の近くに絶対に欲しい」という住民は多い。

 また、ロサンゼルスから数時間ドライブしてわざわざガソリン代を使ってこのカジノ・リゾートに遊びに来る客もいる。

 そんな客は、たとえ賭けで負けても、帰りに向いにあるアグア・カリエンテのスタンドで安いガソリンを給油することで、「少しは得した」という気になれ、罪悪感を薄められる点がいいのだという。

 先住民として長年住んでいた土地の多くを白人たちに略奪された歴史を持つネイティブ・アメリカンの人たち。

 彼らに合衆国から与えられた居留地のほとんどは痩せた土地で、農作物の栽培に適さない。そんな中、カジノ運営とガソリン販売は、自治を守るための重要な財源だ。

 だが、非ネイティブの一般のガソリンスタンドにとっては、客を取られてしまう脅威でもあるわけだ。

 そんな中、米西海岸には、ガソリンの「州税」非課税を勝ち取るために闘ったトライブもある。