州税すらかからない
スタンドもある
ワシントン州に「ヤマカ」という名のトライブがあり「ヤマカ・ネイション」が所有する土地のガソリンスタンドでは、州税すらも客にチャージしていない。
この背景には1855年に米政府と同トライブの間で結ばれた条約がある。その条約には「トライブには州を超えて自由に移動し負担を課されない自由がある」という項目があり、この条約と引き換えに、同トライブは数千年間所有してきた先祖代々の土地のほとんどを合衆国に明け渡したのだ。
同トライブ側はこの条約を「州をまたいでガソリンを輸送して販売することも自由」と解釈し、ガソリンに関しては州税を客から徴収せず、州にも税金を納めていなかった。
だが、ワシントン州は「ガソリンに関してだけは別だ。他州から輸送したガソリンに関して過去に遡って360万ドル(日本円で約5億円)の州税を払え」と主張し、裁判に突入した。
約6年間の闘争の後、2019年に米最高裁が1855年の条約を根拠に「ヤマカ・ネイションには州税を課されることなく、ガソリンを輸送し売る権利がある」というヤマカ勝利の判決を下した。
全米各地のネイティブ居留地で2025年のいま、物価高騰に苦しむあらゆる消費者たちが、安いガソリンの恩恵を受けられる背景には、先住民たちの血と汗と涙の闘いの歴史が存在していたことも記憶に留めておきたい。
