こうして「集団的な承認」がなされることで、ホストクラブに通う女性たちは自らを分類し、消費者として適切な行動と承認を得られているかを比べ続けることになる。
「外見が良い=稼げる女」
根づいた価値観
ホスト通いによって顧客が得られる承認のなかで特筆すべき点として、大金を投じる女性の多くは「女らしさ」を資本として金を稼いでいることが挙げられる。
キャバクラから風俗、立ちんぼ、パパ活、AVなど、エロス資本を前提としたビジネスに従事する彼女たちは、容姿と経済力が直接的に結びついている。
「外見が評価される=稼げる人材」という価値観が根づいているのだ。
筆者がホス狂いの友人に担当被り(編集部注:同じホストを指名している客が店内に2人以上いる状態のこと)の愚痴をこぼしていたとき、「そんな子どうせ稼げなさそうだから大丈夫だよ」という励ましをもらったことがある。
容姿や性格を含めて、「女としての魅力がないから、ホストクラブに必要な金も稼げない」という意味なのだが、「稼げそう」「稼げなさそう」という言葉が、女性としての魅力を直接表現する言葉になっていることに衝撃を受けた。
こうした「外見が良い=稼げる女」という規範が生まれたことにより、客は自己評価の軸が「金を稼げる容姿」となり、自己肯定感が上下する。
自分の好きなファッションを楽しんでいるホス狂いを「甘い」と見なし、「オジサンウケのいい黒髪ロングにして清楚系に擬態もできないで稼げないとか努力不足だろ」という過激な意見も見られる。
ホストクラブで大金を使うという行動は、それだけ「稼げる自分」という人間の価値を証明してくれるようになるのだ。
「担当に『稼げない女』って思われるのが本当に嫌で。可愛いね、綺麗だねとか言われても、人の基準ってそれぞれじゃないですか。でも私が風俗で月300万円稼いでたら、それだけの人が私を可愛いと思って指名してくれているっていう客観的評価なんで。
目に見える形でわかるから、私には価値あるよ、そんな私を大事にしてねってホストに対して思えるんですよね」(22歳・風俗嬢)
こうした思考が定着すると、「ホストに金銭を投じられなくなる=己の存在価値がなくなるのでは」という不安に苛まれることになる。
人の魅力は金銭という一元的なものでは測れないが、ホストが客を評価する基準は投じた金銭である以上、客は金銭以外の己の価値を自ら削ぎ落とすことになる。