アマゾンに依存する私たちは
もう「農奴」になっている

 アマゾンは、はじまりにすぎなかった。アリババは同じやり方で、中国で似たようなクラウド封土をつくり上げた。アマゾンを模倣したEコマース・プラットフォームがグローバル・サウスでもグローバル・ノースでも、至る所あちこちで生まれている。さらに重要なのは、ほかの産業部門もまたクラウド封土に変わりつつあることだ。たとえばイーロン・マスクが成功させた電気自動車のテスラを例にとってみよう。投資家がテスラをフォードやトヨタよりはるかに高く評価するひとつの理由は、テスラ車のあらゆる回路がクラウド資本に接続されていることにある。

 たとえば、運転者がテスラの意向に沿わない使い方をした場合には遠隔操作で電源を切ることができるし、運転しているだけでオーナーはリアルタイムの情報(どんな音楽を聴いているかも含めて!)を提供していることになり、テスラのクラウド資本を豊かにしている。自覚していないだろうが、最新の空気力学で輝くテスラを手に入れた鼻高々のオーナーこそ、まさにクラウド農奴なのだ。

 心揺さぶる科学的発明や幻想的な響きのニューラル・ネットワークや想像を超えるAIプログラムは、なんのために必要だったのだろう?倉庫で働く人、タクシーの運転手、食品のデリバリーをする人たちを、クラウド・プロレタリアートに変えるためだ。市場がますますクラウド封土に置き換わるような世界を生み出すためだ。事業者に封臣の役割を押しつけるためだ。そして私たちみんなをクラウド農奴に変え、スマートフォンとタブレットに釘づけにし、クラウド資本を生産させて封建領主をこのうえなく喜ばせ続けるためなのだ。