部下が動かない本当の理由は「伝わっていない」から

・なぜリーダーの指示は伝わらないのか

ぼくがこれまで多くの企業でマネジメント研修を行ってきた中で気づいたのは、リーダーの多くが「自分は伝えている」と思っているのに、部下には「何も伝わっていない」という現実です。

例えば、「もっと積極的に営業活動をしてほしい」という指示を出したとします。リーダーは明確に伝えたつもりでも、部下からすると「積極的って具体的に何をすればいいのか?」「今でも十分やっているつもりだけど、何が足りないのか?」という疑問が湧きます。

この問題の根本にあるのは、リーダーが頭の中で考えていることを適切に言語化できていないことです。リーダーは「積極的に」という言葉に、

「新規開拓の件数を月20件から30件に増やす」
「既存顧客への提案頻度を月1回から週1回に変える」
「競合他社の動向を週次で報告する」

といった具体的な行動イメージを込めています。しかし、それが言語化されていないために、メンバーには伝わりません。メンバーは自分の推測で動くしかありません。

部下の立場から見たマネジメントの課題

部下の視点に立って考えてみると、問題がより明確になります。

部下が最も困るのは「何を期待されているのかわからない」状況です。リーダーから「結果を出してほしい」と言われても、どのような結果を、いつまでに、どの程度の水準で達成すればよいのかが不明確だと、部下は不安になります。

また、リーダーが「前回の件、どうなった?」と聞いてきても、「前回の件」が何を指しているのか、どの程度の詳しさで報告すればよいのかがわからないと、部下は毎回手探りで対応することになります。

さらに深刻なのは、リーダーの評価基準が言語化されていないケースです。「君はもう少し頑張る必要がある」と言われても、何をどう頑張ればよいのか、どの水準に達すれば「頑張っている」と評価されるのかが不明確だと、部下のモチベーションは下がる一方です。