私はそこまで考えて仕事をしていたわけではありませんが、結果として悪い気はしませんでした。この辺は微妙な心理で人によるので、何とも言えませんが、スター気分を待ち焦がれている裁判官も中にはいるといってもよろしいだろうと思います。
著名判決を夢見ても
自ら事件を選べない
そういう裁判官からすると、著名判決が出る可能性があるポストに座らないとならないわけです。でないと、いくら心の中で願っていてもその願いは実現されないでしょう。その著名判決が出るポストというと、現実には地裁の本庁の民事部または刑事部がその可能性が比較的大きいですね。全国で裁判所といっても大規模な庁もあるし、小規模な庁もありますね。
そういうこともありますけども、本庁は比較的大きな事件を扱いますし、特に東京地裁の本庁となると全国的な政治経済の中心ですから、それ相応に首都ならではの大きな事件が来ます。そうなると、そういう著名判決に当たる可能性が高くなるわけです。それとは逆に、地裁の支部や家庭裁判所となると、そういう著名判決はあまり期待できません。こうなると、どのポストに座るかということに関係してきますから、裁判官人事と連動しているということはお分かりになるだろうと思います。
念のためにいっておきますと、裁判官は事件を選べません。自分はあの事件を担当してみたいと思っても、そうはならないシステムなのです。受付順に自動的に事件係が係属先の裁判体を事務的に割り振っていきます。したがって、裁判官があの事件をやりたいと思い、あらかじめそのような希望を事務方に伝えておいても効果はありません。裁判官は自分の係にやってきた事件を担当するという消極的受け身的な立場なのです。
このあたりは、弁護士とは全然違いますね。弁護士は事件を選ぶことも仕事のうちです。裁判官が御用聞きに回って事件を集めてきたり、自分がやりたい仕事を見つくろってピックアップしたりというようなシステムにはなっていないのです。そういうことを認めてしまうと、判決が影響を受けてしまう可能性がありますね。