これが意外と難しいのは、同じ相手と長くいればいるほど、意識的に伝えるという自覚がなくなることがしばしば起きるからです。
わざわざ口に出さなくても気持ちが通じ合う関係は一見するとステキなことでもあるでしょう。でも、言わなくても伝わると思っていたのに伝わっていなかったとき、ショックを受けるのはあなたです。
どんな些細なことも、口に出して
共有しておいたほうがベター
そもそも口に出していないのであれば、ミス・コミュニケーションが多くなるのは当然です。だから本当は、どんな些細なことも口に出して共有しておいたほうがベターなのです。
では次に、このように身近ではない人、たとえば初対面の人と対話することをイメージしてみてください。そこでは、あまり深く有意義な会話はできない、そう思っているのではないでしょうか。
私たちの多くが、見知らぬ人とはちゃんとした会話はできないと思っています。とりわけ自分の話なんて見知らぬ人にとっては面白くもないし、関心もないと信じ込んでいるようです。
しかし、社会心理学の研究で実験を行ってみると、まったくそんなことはないことがわかってきました。
たとえば、私たちは自分が泣いてしまったときのことや失敗してしまったことは、見知らぬ人には話せないと思っていますが、実際に話してみると、彼らはその深刻さや真剣さに応じて、ちゃんと話を聞こうとしてくれるのです。
その結果、見知らぬ人との会話が終わると、人々は予想していたよりも気まずさを感じることがなく、相手とのつながりを感じ、幸せになったといいます(*3)。
(*3)Kardas M., Kumar A., Epley N.,Overly shallow?: Miscalibrated expectations create a barrier to deeper conversation, Journal of Personality and Social Psychology, 122 (3), 2022, pp. 367–398.