もう二度と会わないような人のほうが
先入観なく対等な立場で話が聞ける

稲垣論『やさしいがつづかない』(サンマーク出版)『やさしいがつづかない』(サンマーク出版)
稲垣諭 著

 何の接点もなく、もう二度と会わないような人、つまりお互いがお互いの人生に対して責任をもたない状況での会話のほうが、それぞれ先入観で相手を見たり、判断したりせず、対等な立場から一生懸命話を聞こうとするのです。

 ある意味で心理セラピーや、街角の占いなどは、金銭的な関係は発生するけれども、それに近いものだといえるでしょう。彼らは、とにかくあなたの話に耳を傾けようとしてくれますから。

 もしかすると今後はChatGPTのような生成AIロボットがあなたの話にしっかり耳を傾けてくれるようになるかもしれません。すでに医療セラピーでは、人間に話を聞いてもらうより、AIに話すほうが安心できると評価する患者が多数いることもわかっています(*4)。

 また、イヌやネコといった伴侶動物(コンパニオン・アニマル)に話しかけたり、もっといえば、非生物的な「ぬいぐるみ」と話したりすることで、心が安らぎ、気持ちの整理ができることさえあるのです。

(*4)Hatch S.G., Goodman Z.T., Vowels L., Hatch H.D., Brown A.L., Guttman S., et al.,When ELIZA meets therapists: A Turing test for the heart and mind, PLOS Ment Health 2(2), 2025, e0000145.