「前にも言ったよね!」は
問題解決につながらない
仕事を任せる際に注意事項を伝えたにもかかわらず、部下にミスをされてしまうと「事前に注意したはずなんだけどなぁ…」と思い、残念な気持ちになります。一度や二度ならまだしも、何度もミスを繰り返されると、感情的になり、「前にも言ったよね!」と強い口調で当たってしまうこともあるでしょう。
しかし、これはパワハラと受け取られる可能性があるだけでなく、問題の解決にはつながらないので避けるべきです。
そもそも、なぜ「伝えたこと」ができなかったのでしょうか?
原因は『注意事項を忘れてしまったから』です。一度に複数のタスクを伝えられた場合は「認知的過負荷」により重要な情報が抜け落ちてしまうことがあります。脳内にはパソコンで言うワーキングメモリー(作業領域)のようなものがあり、情報処理を行う際に、その容量を超えると過剰に負荷がかかり、上手く対処できなくなるのです。
対策は、一度に大量の指示を与えず、項目を分けて伝えることです。人が一度に認識して記憶できる項目は「4±1」と言われています。それ以上のことを伝える場合は、別のタイミングで伝える方が良いでしょう。
また、大切な項目を伝える前に「ここからすごく重要なことを伝えます」と強調すると受け取り方が違ってくるので効果的です。伝えた後は、「ここまでで何か質問はありますか?」と確認したり、伝えたことを部下に復唱させたりして、情報がきちんと伝わっているか確認してください。
それでも新しい業務が次々に舞い込んでくると、それまでに記憶されていたことが、ドンドン上書きされていき、忘れてしまうというケースもあります。
たとえば飲食店の店内が満席状態のとき、スタッフに「水をください」と伝えても、その後すぐに、他のテーブルから追加オーダーが入った場合、先に聞いていた「水を持っていくこと」が「注文を受けたこと」に上書きされてしまうこともあるでしょう。
こうした「うっかり忘れ」への対策としては、メモを取る習慣をつけることが効果的です。新人にはポケットに入るサイズのメモ帳を常時携帯させて、指示されたこと、やるべきタスクをメモに「書く」「見る」、そして業務が完了すれば「消す」ように習慣づけます。