次に体力を温存し、無事に帰宅できる方法についてお伝えします。

気候・天候を見極めよう

 徒歩で長距離を移動するときには「気候・天候」をよく見極めた方がいいでしょう。同じ10kmであっても、「15℃前後の小春日和」と「30℃を超える猛暑日」では奪われる体力が全く異なります。気温も5℃以下になると帰宅中の休憩時に熱が奪われ、低体温症になる恐れがあります。

 また、気候の変化にも注意をする必要があります。雨天になると体温が奪われ、心も折れてくるので空模様が怪しければ帰宅しない方がいいでしょう。

 体を鍛えている陸上自衛官でさえ、猛暑日や雨天に行軍をすると脱落者が発生する確率が高まります。気温・天候に不安があるようであれば帰宅はやめましょう。

同じ道を歩く人を探そう

 もし、職場に自宅と同じ方向に帰る人がいたら、一緒に帰りましょう。
 
 アフリカのことわざに「早く行きたければ、一人で進め。 遠くまで行きたければ、みんなで進め」とあるように、仲間と話しながら帰ることで疲労が和らぎますし、「休憩中に荷物を見てもらえる」「いざというときに助けを呼んでもらえる」などの精神的な安心感につながります。

 同じ方向に帰る人がいない場合は、人通りが多い広い道を選んで歩いてください。連帯感が生まれますし、近くに「この方は信頼できそうだな」という方がいれば話しかけて一緒に帰るのも良いでしょう。

 また、災害後は治安の悪化が予想されるため、人気のない裏道などを一人で歩くのは絶対に避けてください。

50分に10分休憩しよう

 可能な限り、50分歩いて10分休憩するペースを維持してください。これは自衛隊の行軍の休憩ペースです。

 休憩時には靴を脱いで足を乾かす、服を緩めて熱を発散させる、座ったときにリュックなどに足を上げ、むくみを解消してください。ここで眠くなっても寝るのはできる限り、避けてください。眠ると体が冷えますし、筋肉が硬くなり、休憩明けに「だるいな…」と感じるようになるので注意してください。

水を飲みすぎない、塩分を補給する

 水分補給は大切ですが、1回に飲む量はコップ1杯程度、500mlの1/3のライン(150~250ml)を意識してください。

 歩くと喉が渇き、500mlのペットボトルを一気飲みしたくなりますが、多量の水分を摂取しても体が吸収できずに、汗や尿として流れ出ます。その際に体内のミネラルも失われるので、低ナトリウム血症になる可能性があるからです。

 また、失ったミネラルを補給するために、塩タブレットや梅系のお菓子を食べてください。多量の水分を飲み、多量の汗をかくと想像以上に体力も奪われますので、水分については自制心を持って飲むように心がけてください。

 なお、空のペットボトルは捨てずに持っておきましょう。水道が生きていれば水分補充ができますし、水害が発生したときのウキとしても役に立ちます。
 
 被災時に徒歩帰宅をすることは、それなりにリスクが伴う行為です。自信がなければ無理に帰らずに、オフィスや避難所にとどまることも賢い決断だと考えてください。

 災害のときこそ、パニックにならず落ち着いて適時適切に判断することが、身を守るポイントです。