「親が買ったのに、なぜか子供が夢中で読んでます!」
こんな感想が寄せられているのが、2024年の年間ベストセラー4位(ビジネス書単行本/トーハン調べ)となった書籍頭のいい人だけが解ける論理的思考問題だ。思考力を鍛えるためのビジネス書だが、小学生を含む幅広い年代に読まれ、中国・韓国・台湾・タイでも出版が決まるなど、いま世界的に話題になっている。
知識や難しい計算はいっさい不要で、「考える力」のみが問われる論理的思考問題は、小中学校の受験問題、就職試験問題、Google、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験などでも出題されている。
ではこの論理的思考問題、人間よりも賢いと言われる「AI」は解くことができるのだろうか? この記事では、67の論理的思考問題を紹介している同書から1問を選んで、AIに出題してみた。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

「子供と一緒に読んでます!」との声も。話題の知的トレーニング本で紹介されている問題『10回のじゃんけん』を、AIは解けるのか?問題文は書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』より

人とAI、「頭がいい」のはどちらか?

 論理的思考問題は、世界中で創作され、何百年にもわたって楽しまれてきました。
 この「人が創り、人が解いてきた」問題、人間より賢いと言われる「AI」は解くことができるのでしょうか?

 そこで、「論理的思考問題」の定義をしたうえで、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から1問を抜粋して、AIに下記のように聞いてみました。

「論理的思考問題」と呼ばれるものがあります。以下が、その特徴です。
 ・知識や難しい計算は不要で、問題文を読んで論理的に考えれば答えが出せる
 ・必要な情報は、問題文に書かれていることのみ

 上記の定義を踏まえて、下記の「論理的思考問題」を解いてください。


「10回のじゃんけん」
 A,Bの2人が、じゃんけんで10回勝負をした。

 Aはグーを3回、チョキを6回、パーを1回出した。
 Bはグーを2回、チョキを4回、パーを4回出した。

 あいこには一度もならなかった。
 熱中しすぎた2人は、何の手をどの順番で出したか覚えていない。
 多く勝ったのはどっち?

 なおAIは「ChatGPT 4o」を使用し、AIへの質問とAIによる回答の内容は実際のものから変えずに、文字のサイズ、色、太さの変更のみ編集しています。

 さて、AIの回答はいかに?

AIの回答

 これは面白い「論理的思考問題」ですね。

 知識も難しい計算も不要なので、条件を整理しながら論理的に進めます。

 

 ◾️条件整理

 1. 試合数

  ・全10回。

 2. あいこは一度もない
  →つまり、必ずどちらかが勝つ

 3. Aの出した手の回数

  ・グー:3回
  ・チョキ:6回
  ・パー:1回

 4. Bの出した手の回数

  ・グー:2回
  ・チョキ:4回
  ・パー:4回

 

 ◾️勝ち負けの関係

 ・グーはチョキに勝ち、パーに負け
 ・チョキはパーに勝ち、グーに負け
 ・パーはグーに勝ち、チョキに負け

 

 ◾️論理的に消去法で考える

 重要ポイント
「Aが出した各手に対して、Bが何を出したかで勝ち負けが決まる」。
 10回の組み合わせの結果を合計すれば、どちらが勝ち数が多いか分かる。

 アプローチ
「Aの各手で、Bの手を全部当てはめてカウントする」。


【Aがグーを出した3回】

 ・グー vs グー →あいこ(NG、あいこはない)
  →なのでBのグーはAのグーと当たっていない。
 ・チョキに勝つ
 ・パーに負ける

  →つまりAのグーは必ずチョキかパーと当たる

 Bのチョキ4回・パー4回なので、この3回のグーは
 ・勝ち(チョキ)か
 ・負け(パー)

  →回数制約から考える必要があるので後ほど合計で整理。

 

 同様に整理します。

 

【Aのチョキ6回】

 ・チョキ vs グー →負け
 ・チョキ vs チョキ →あいこ(NG)
  →これもあいこNGなので、AのチョキはBのチョキには当たらない。
 残るは
 ・パー(勝ち)
 ・グー(負け)

  →つまりAのチョキ6回は必ずパーまたはグーと当たる。

 

 【Aのパー1回】

 ・パー vs チョキ →負け
 ・パー vs グー →勝ち
 ・パー vs パー →あいこ(NG)

  →あいこNGなので、Bのパーは当たらない。
  →Bの残る手はチョキ or グー。

 

 ここで重要な観察:
 あいこが一度もないので、同じ手は同じ回数だけ当たらない。
 つまりAのグー3回は、Bのグー2回と絶対に当たっていない。
 同様に、

 ・AのチョキはBのチョキに当たらない
 ・AのパーはBのパーに当たらない

 

 ◾️各手の合計勝敗

 手ごとに「どれと当たるか」を明示します。

 ・Aのグー3回:Bのチョキ(勝ち)かパー(負け)
 ・Aのチョキ6回:Bのパー(勝ち)かグー(負け)
 ・Aのパー1回:Bのグー(勝ち)かチョキ(負け)

 

 注目ポイント
 Bのパーが4回もあり、Aはパーが1回しかないので、Bのパーは主にAのチョキと当たる。
 同様にBのグーはAのチョキ・パーと当たる。

 

 最終的にどうなる?
 実はこの問題、有名な「隠れた確定構造」で、あいこがない場合、各手の当たり方により最終勝敗が一意に決まります。

 結論として、
 Aのチョキ6回のうち、Bのパー4回に当たる部分はすべてAの勝ち
 残り2回のチョキはBのグー2回に当たるので負け。
 AのパーはBのチョキに当たるので負け。
 Aのグー3回は、残ったBのチョキ4回のうち3回と当たるので勝ち。

 

 勝ち数を数えます:

 ・Aのチョキ6回 →4勝(vsパー)+2負(vsグー)
 ・Aのパー1回 →1負
 ・Aのグー3回 →3勝

 合計:
 Aの勝ち:4(チョキvsパー)+3(グーvsチョキ)=7勝
 Aの負け:2(チョキvsグー)+1(パーvsチョキ)=3負

 

 ◾️結論
 Aが7勝、Bが3勝。

 多く勝ったのはA。

 読んでいて、途中、思いませんでしたか?
「あ、これ、迷走してるな」って。
 中盤まで、問題の整理やじゃんけんのルールなど、当たり前の内容が繰り返されています。

 ですが終盤、急に確信めいたことを言い出し、結論が出てきましたね。
 ではこの回答、正しいのでしょうか?

 AI回答はちょっとわかりにくい部分もあるので、次ページで、書籍で紹介した解説と回答を確認してみましょう。