F:荷物が積みやすいし、雨が降ったら屋根にもなる。開口部が大きくなるから車体剛性の問題はありますが、それさえクリアできれば、テールゲートが大きいのは良いことずくめですね。
諫:それがですね。良いことばかりじゃないんですよ。ゲートが大きいから大きく開く。大きな板がブンと大きな弧を描きながら、思ったよりも大きく後ろの方まで行くんです。開ける人は身体をずらしながら開けないといけません。また、慣れない人が開けると、ゲートが自分のあごをガンと直撃することがある。
F:セルフアッパーカット……。
N-BOXユーザーは、普段ほとんどリアゲートを使わない
諫:それを予防するために、ゲートのハンドルの位置を、あえて下の方に配置しています。ハンドルの位置と下端部分が近ければ、ドアの動きの予測が付くでしょう。だから顎を打つこともない。先代ではもう少し上のほうにあったんですね。そこは改善しています。
F:センサーを付けて、足をバンパーの下に入れたら開くようなオプションはないのですか?
諫:もちろん検討はしました。こういうのもあった方が便利じゃないか、という議論は散々重ねました。しかし調べていくと、このクルマを使う多くの方、特に女性の方々は、普段ほとんどリアゲートを開けないという事が分かりました。普段使いはほとんどサイドのスライドドアなんですね。お買い物袋を入れるのも、ベビーカーを入れるのも、みんな横からです。後ろを開ける人はあまりいない。
実際、横から何でも入っちゃうんです。スライドドアを開けるだけでガバっと大空間が生まれるんです。必要ならシートも跳ね上がるし、本当にもう何でも入ってしまうので。横ならスペースをほとんど取らずに開けられますが、リアゲートだとそうはいかない。ガバっと後ろに大きく開きますから、それなりのスペースが必要です。だから、使用頻度は圧倒的にスライドドアなんですね。
F:なるほど。ならばリアに自動ドアは必要ない、と。
諫:そうなんです。だからリアゲートには電動機構をつけず、その代わり、スライドドアには両手がふさがっていても足先をかざすとパワースライドドアが自動開閉する機能がオプション設定されています。