しかし、新工場建設や店舗開設の投資負担が収益を圧迫するなか、近年は同業者との競合もあり集客数が徐々に低下。2024年5月期は年売上高約2億2000万円、約3000万円の最終赤字になっていた。

 以後は、原材料の高騰が顕著となり、業績の改善が進まないことから、2025年1月に八戸店、2月にも2店舗を閉鎖。2月18日付で事業を停止し、2月20日青森地裁民事部より破産手続き開始決定を受けた。負債は2024年5月期末時点で約7億1600万円だが変動している可能性がある。

(株)壽三色最中本舗(宮城県名取市、登記面=仙台市青葉区)

 1931年(昭和6年)創業、52年(昭和27年)に法人改組された。「三色最中」を主力商品として、ようかんやゆべしなどの和菓子を製造し、県内の百貨店内などで6店舗を展開。92年3月期には年売上高約7億9500万円を計上していた。

 しかし、消費者の嗜好の変化や大手洋菓子チェーン店の出店、同業者との競合もあり減収傾向で推移。新型コロナの影響による来客数の減少から2021年3月期の年売上高は約2億1000万円に落ち込み、最終赤字となっていた。

 コロナ収束後も売り上げは回復せず原材料費の高騰も重なり、資金繰りが限界に達したことから、2025年3月31日付で従業員を解雇し事業を停止。4月23日に仙台地裁へ自己破産を申請し、5月2日に破産手続き開始決定を受けた。負債は債権者約103人に対し約5億円。

菓子小売事業者の
経営者は50代が最多

 コロナ禍の業績・資金繰り悪化をゼロゼロ融資を受けて乗り越えたが、その後の原材料、光熱費、包装資材などの高騰で収益を出せず、融資返済に苦しむ事業者は数多い。特に和菓子やせんべいをメインとする店舗では、常連客や職人の高齢化がさらに進むことで生産・販売の両面に影響が出る可能性もある。

 また、ジャンルを問わず、和菓子、洋菓子、アイス類など豊富な品ぞろえの大手チェーン店の新規出店は引き続き周辺小規模事業者にとって大きな脅威となっている。

 一方で経営者の高齢化は進んでいるのだろうか。帝国データバンクが年齢の判明している全国の菓子小売事業者の社長2095人を分析したところ、「50代」が構成比29.3%で最も多く、以下、「60代」(同24.4%)、「70代」(同17.8%)、「40代」(同16.8%)、「80代以上」(同7.3%)、「30代以下」(4.5%)と続いた。

 50代以下の人数が60代以上の人数をわずかにではあるが上回っており、深刻な状況ではないものの、今後、エリアやジャンル間の差が顕著になっていく可能性がある。