創業57年で廃業を決意
陥没事故で基幹店に打撃

 2025年は倒産だけでなく、廃業・休業・解散というかたちで事業を停止した菓子製造小売事業者も急増している。2024年は46件だったが、今年は1~6月で38件確認されており、年換算すると70件を超えるペースだ。これは過去最多となっている2018年(52件)を上回るペース。

 そうしたなか、葛飾区と埼玉県の八潮、越谷、三郷で、どら焼きをメインとした和菓子店を運営するえびす製菓(東京都葛飾区)が、9月30日をもって全店舗を閉鎖、営業を終了することを公表した。

 えびす製菓は、現代表・石塚晃司氏の父である紳一郎氏によって1968年に設立。現在の従業員は50人ほどで、葛飾区に2店舗、八潮市など埼玉県内に3店舗の計5店舗を構えている。北海道の「かおり豆」で作る餡にこだわり、葛飾区内の自社工場にて製造した「満願どら焼き」などを店頭やオンラインショップで販売。2024年9月期は年売上高約1億4000万円を計上していた。

 老舗の和菓子店として地元で愛されてきたが、なぜ廃業を決断したのか。

 一つにはコロナ禍での来店客数の減少があった。ゼロゼロ融資で乗り越えたものの、従前からの借り入れもあって、返済の負担は重くなっていた。さらに2024年には、どら焼きの原材料である小豆が前年の猛暑による不作で値上がり。卵も鳥インフルエンザなどの影響で高騰し、調達コストを価格に転嫁できず利益率が悪化していた。

 そしてそのような状況に追い打ちをかけたのが、今年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故だ。当社の売上高の3分の1以上を占めていた八潮店の前を通る県道54号線をまっすぐ西に1.3キロほど行った場所が陥没現場で、近隣では現在でも交通規制されている箇所がある。陥没事故以降、かろうじて運営は続けていたが、来店するには迂回路を通らねばならず、客足は大きく減少した。

 店舗には「最後の営業日まで、従業員一同心をこめて営業してまいります」(冒頭写真)との張り紙がされており、地元情報を掲載するサイトやSNSなどでも閉店を惜しむ声があがっている。事業譲渡や売却などは考えておらず、社有の店舗や土地などの資産を売却し、清算に充てる予定だという。