
実は日本の上場企業には「年収1億円以上」のビジネスパーソンが1199人もいる。果たして、どんな顔触れなのだろうか?幹部の報酬が、諸外国に比べて低過ぎるという指摘もあるだけに、年収が高いこと自体は批判されるべきではないだろう。ただ、業績や株式市場からの評価が振るわないにもかかわらず、1億円ももらっているのであれば、従業員や株主は心穏やかではいられないかもしれない。そこで、ダイヤモンド編集部では上場企業3890社を対象に、年収1億円以上の経営陣を調査、業界ごとに実名でのランキングを作成した。特集『「最新版」1億円以上稼ぐ取締役1199人の実名! 上場3890社「年収1億円以上幹部」ランキング』(全24回)の#8では、自動車・輸送用機器業界の報酬ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
自動車・輸送用機器業界は年収1億円以上が47人!
日産株主総会で退任報酬巡りヒートアップ
「内田さんはなぜしゃべらないのか?そこに座っていることが恥ずかしくないのか?」――。
2025年6月24日に行われた日産自動車の株主総会。その場で、株主から厳しく糾弾されたのが、内田誠前社長だった。ホンダとの経営統合破談や、日産の経営不振の責任を問われた。
株主をヒートアップさせたのは、内田前社長をはじめ、日産経営陣の高額な退任報酬だった。株主総会をもって役員を退いた内田前社長、坂本秀行前副社長、星野朝子前副社長、中畔邦雄前副社長の4人の退任報酬は、合計6億4600万円であった。総会前から「工場閉鎖や人員リストラをするのに、役員の退任報酬が高額ではないか」との声が社員らから上がっていた。
こうした指摘に対して、日産で報酬委員を務める井原慶子社外取締役は、開示された報酬額の大半は、日産が指名委員会等設置会社に移行する前の18年までに労働条件として対象者に通達されたもので、不正などがない場合は退任時に支給されると説明した。
日産の企業規模や、その取締役という立場に照らし合わせれば、6億4600万円という4人の退任報酬は決して多過ぎるとはいえない。退任報酬とはいわゆる退職金に相当するものであり、長ければ数十年にわたる日産での働きに対する対価といえる。近年の業績だけで大きく上下させるのでは酷だし、実際、業績貢献に対する退職金部分については「支給しなかった」と明らかにしている。
では、退任報酬ではなく1年ごとに支払われる通常の役員の報酬はどうか。24年3月期に年収1億円以上を受け取った日産の幹部は6人と、トヨタ自動車の7人に迫る勢いだったが、25年3月期はどうなのか。
さらには、日産に限らず自動車・輸送用機器の各社で「年収1億円以上」の経営幹部は、どれほどいて、どんな顔触れなのか――。
ダイヤモンド編集部では、経営トップの会長、社長のみならず役員を対象に、年収1億円以上の高額な報酬を受け取っている人物を業界別に集計した。1社から複数人が記載される場合もある。また、本特集では高収入を単純に批判する狙いはない。ランキングには、年収額と併せて、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、時価総額も掲載しているので、それらに「見合う年収」を得ているかの参考にしてほしい。
集計の結果、自動車・輸送用機器業界で「年収1億円以上」は47人いることが判明した。全業界の平均38.7人を8人も上回っている。トップは、19億4900万円をもらっていた。
トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スズキ、三菱自動車、SUBARU、いすゞ自動車、デンソー、アイシン、豊田自動織機、ヤマハ発動機といった企業の幹部たちは、幾らもらっているのだろうか。村上開明堂やシマノといったオーナー企業の幹部も数多くランクインした。次ページで実名と共に一挙に見ていこう。