それの気遣いは、お客さまのため?
それとも自分のため?

そこで、「実は一週間ぐらい前に、同じようなことがあったんだよ、覚えてる?」って話をしたんです。

「その時に君は、後ろを見向きもしないで、そのままドアを手放した。実はその後ろから子ども連れのご家族が来て、たぶん君がドアを押さえてあげれば、あの家族連れ、ちっちゃい子もいたそのご家族は、きっと君に『ありがとうございます』とか、『すみません』とか言っていただろう。
その人はその人で、たぶんありがたいっていう気持ちになるし、君も言われて、きっと今の僕のように温かい気持ちになってたはずだよ」って。

編集部 この何気ない、温かいやりとりって……。

川田 そうなんです。営業って、実はすべてそういうことなんです。
お客さまに、自分が何かで役に立って、お客さまがそれに対して「ありがとう」って言ってくれる。
そのやりとりを通じて、自分が人の役に立っていると感じられる。
営業に限らず、仕事って全部そうだと思うんです。
ちょっとした気遣いでありがとうの数が増えるんだったら、そうしたほうがいいんじゃないかって。
こういう日々の積み重ねが「レベル10」と「レベル11」との違いにつながっていくのだと、後輩には話しました。

編集部 川田さんの書籍『僕は明日もお客さまに会いにいく。』の中でも、
同じような話が、違うケースで出てきますね。
ちょっとした違いが大きな差を生む。
このことは前著『かばんはハンカチの上に置きなさい』にもありました。
「ありがとう」をいただいて温かな気持ちになるから、やったほうがいいじゃない。
たしかにわかります。
でも、あえていじわるな質問をしたくなってしまいました。

川田 なんでしょうか、どうぞ(笑)。

編集部 ずばり川田さんは、お客さんが喜ぶからやってるんですか。それともやっぱり自分自身を売り込むためにやってるんですか?