「株主総会を目前にして、取締役会が社長を解任するなどまったく常軌を逸している」
定時株主総会を13日後に控えた6月13日、川崎重工で起こったお家騒動に、ある鉄鋼メーカー幹部は衝撃を受けていた。
「社内の権力闘争に三井造船との合併話がうまいこと利用されたという一面も否定できない」
合併に対する強い抵抗や反発がいくら広がっていたとしても、株主総会直前の臨時取締役会で社長、副社長が解任されるというのは尋常ならざる事態だ。それこそ合併を巡って先鋭化した対立が社内の権力闘争に利用されたとしか考えようがない。
社長解任の臨時取締役会で新社長に選任された村山滋氏は、前社長解任の理由を記者会見で尋ねられ、次のように語っている。
「三井造船との経営統合について聞かされたのは、新聞報道があった4月22日の1~2週間前だった。会社の命運を左右する経営統合に関して適切なプロセスを度外視したことに対し、強い不満と不信を抱いた」
「経営統合打ち切りを議題とする臨時取締役会を6月13日に開く予定を決めていたが、3人は交渉が打ち切りにならないように画策。コーポレートガバナンス(企業統治)上で見逃せなかった」
だが、日本証券取引所の斎藤惇CEOが「株主のことが全く頭から消えていたのではないか」と苦言を呈しているように、解任劇そのものもコーポレートガバナンス上見逃せぬ大問題を抱えている。