世の中のいい言葉には、法則があると気づいた

村上 佐々木さんも、コピーを最初に書けなかったそうですね。

佐々木 書けなかったですね。文章を書く勉強もしていなくて、突然コピーライターになっちゃったんですよ。それで、書いてみろ、って言われて、頑張って書くわけです。仕事ですから。
 ところが、全然コピーにならない。上司に見せると「ひでぇなぁ」みたいな。何枚もコピーを書いて持っていくんですが、最初は一枚ずつ見てくれていたのが、そのうちパラパラって、めくられてしまって。

村上 どうせダメだろう、みたいな。

佐々木 そのまま、ゴミ箱に直行、みたいなことがあって。これが何度も続くと、やっぱりキツかったです。自分は、世の中にいる存在価値がない、と思っていましたし。めちゃめちゃ向いていない仕事に就いて、これからどうしよう、みたいな。それで、安らぎをプリンに求めてしまって。

村上 プリン食べ過ぎて、太っちゃうんですね(笑)。

佐々木 一日三つ食べて、あごがなくなって、おなかも出てきて。それでもやめられない。プリンだけがわかってくれる、と思っていました(笑)。いつでも甘いし、いつでもおいしいし。冷蔵庫に行けば、僕を迎えてくれる。そんな時代が長く続いたんです。
 もともと伝えることが上手じゃなかったのに、コピーライターという仕事に就いて、どうしようかな、と思っていたときに、それこそ勉強のために、映画の名台詞集とか、広告の名作コピー集とかをいっぱい読んでいたんですね。その中で、いいなと思うものをとにかく引き出して。
 そのときは、それが何かになるとは思っていなかったんですが、やることなかったから出して言ったら、あるとき、ふと気が付いたんです。これとこれは似ているなぁ、と。
 もしかしたら、法則があるんじゃないか、と。

村上 なるほど。

佐々木 その法則があるというつもりで言葉を見てみると、世の中にあった、いい言葉って、法則が山のように実はあるんだと気づいたんです。一方で、漫才師の方の本で師匠の真似を一生懸命にしようとしていた、という話を偶然、読んで。

村上 そうなんですか。

佐々木人を笑わせることもそうだし、人を感動させることも、なにかしらのルールがあるんじゃないか、と思うようになって。それを作ることができれば、もちろん完璧に作れるようには突然ならなかったとしても、誰でも一般の人たちの中ではレベルの高いもの、家庭で味わえるプロの味みたいなところまでは持って行けるんじゃないか、と思ったんです。