「結局、何がしたかったのかわからない会談だった」。政府関係者の1人はため息をついた。
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東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働をめぐって、甘利明経済再生相が7月30日に泉田裕彦新潟県知事と行った会談。甘利氏は「安全審査と再稼働の判断は別問題」と再稼働への審査申請に理解を求めたが、泉田知事は「機械的な性能基準を見ただけでは済まない」と反論し、物別れに終わった。
東電は昨年の電気料金値上げの際に、今年4月の柏崎刈羽再稼働を盛り込んでいたが、政府の中枢にいる甘利氏が駆けつけての会談を経ても事態は硬直したまま。それどころか、東電は福島第1原発での汚染水問題の対応のひどさが加わり、再稼働はさらに遠のいているのが現状だ。
東電内では「不備のあった他原発よりも技術的な準備は整っている」(関係者)と執念を燃やす声があるが、電力業界でも「冷静に考えて無理。早くても来年ではないか」(地方電力幹部)と、冷めた意見が増えている。
再稼働の道筋が見えないのは東電だけではない。7月8日に原子力規制委員会による新たな原発の規制基準が施行され、電力会社4社から計12基の安全審査が申請されたが、規制委による原発の“選別”が目下進んでいる。
東電の次に、見通しが厳しいのが関電だ。関電は新基準の施行に合わせて大飯3、4号機と高浜3、4号機の審査を申請したが、国内で唯一稼働中の大飯は原発直下を走る断層が活断層かどうかで判断が対立。定期検査に入る9月までは稼働を継続するが、その後の再稼働に影響する可能性がある。
さらに、高浜についても、規制委が想定する津波の高さを不十分と指摘しており、結局、関電が評価を見直すことになった。
関電も再稼働が大きく遅れそうなことから、「東電だけでなく、関電の再値上げも可能性が高い」(経産省幹部)状況になってきた。