ところが最近、こうした2つの世代とは異なる第三世代の起業家たちが台頭しています。彼らは「生きる価値」と「働く価値」をもっと早期に一致させたい。小学校の時間割にたとえるならば、第一世代は6時間目のあと、放課後になって学校の外に出て行ったのが、第二世代では、お昼休みの直後、もっと早くに外に飛び出した。

 第三世代は、「もっと根本的に、いきなり両方をかなえたい」って、縦に並んだ時間割を横にして、ビジネスとソーシャルの両方を同時に動かして行こうとするんです。

第三世代の社会起業家たちが駆使する<br />「セオリー・オブ・チェンジ」とは何か?<br />対談:井上英之×紺野登(前編)紺野登(こんの・のぼる)
多摩大学大学院教授、ならびにKIRO(知識イノベーション研究所)代表。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。その他大手設計事務所のアドバイザーなどをつとめる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(経営情報学)。組織や社会の知識生態学(ナレッジエコロジー)をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、研究所などのワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。

紺野 日本ではいまだ、その第二世代と第三世代が混同して理解されているようなところがありますので、違いを最初に明確にしておくのは、とても重要なことだと思います。

 今、井上さんが指摘された世代的な違いを僕なりに咀嚼して解釈すると、第二世代まではまだ、既存のキャピタリズムの枠組みの中でビジネス的なるものとソーシャル的なるもののバランスを取ろうとしていたように思います。

 しかし、第三世代はそういう第二世代、あるいはその前の第一世代が作った仕組みも巧みに利用しながら、キャピタリズムの枠組みそのものを一気に変えて行こうと動いている。社会や経済の仕組みや関係性、ビジネスモデルの再編成・再構築に取り組もうとしているという意味で、彼らは起業家というよりもデザイナーなのだと思います。

 ですから、第二世代を「ソーシャル・アントレプレナー」と呼ぶのなら、第三世代はむしろ「ソーシャル・デザイナー」と言う方がふさわしい。