ここだけは見習いたい!?
黒崎流「尋問の極意」
私たちメンタリストの間では、視線によって相手にプレッシャーを与える手法を「目で縛る」と表現しています。
メンタリストのパフォーマンスの多くは、プレッシャーをかければかけるほど正直で素直な反応が表出しやすくなるという人間の心理作用を活用しているのです。
さまざまな手法で相手の心理をゆさぶり、気づかないうちにポロリと出したボロを見逃さずに拾い上げる。そうすることで、「見えないものを見えているように思わせている」わけです。
心理学では「相手と目を合わせている時間が長いほど信頼感が生まれ、相手への好意につながる」と言われています。また、「5秒以上、何も言わずに相手の目を見つめることで、相手に特別な感情(たとえば、恋愛感情など)を与えることが可能」とも言われています。
このように、心理学やメンタリズムでは、視線は好意を伝えるとても有効な非言語コミュニケーション方法だと考えられているのです。
しかしその一方で、まったく逆の効力を発揮する場合もあります。
ここでみなさん、ちょっと想像してみてください。
あの黒崎さんが、あなたの上司だったとしましょう。あなたがしでかした仕事のミスに対して、原因や責任の所在を厳しく問いただしています。いつにもまして鋭い口調で答えを迫っています(しかもいつものオネエ口調で)。ジーっとあなたを見つめ、返答を待っています。
さて、あなたはそんな上司の黒崎に対してどんな感情を持つでしょうか。信頼できる?好きになる?これからも一緒に仕事をしたくなる?100%そう答える人はいないでしょう。
ただでさえミスをしてプレッシャーを感じているのですから、そんなときに目をジーっと見られたら、間違いなく相手にたいして嫌悪感を抱くようになるでしょう。長ければ長いほどその感情は強くなるはずです。
心理学者のエールスワースも「基本的にアイコンタクトをすれば人は好かれるようになるが、相手にとって都合の悪い話をしている場合は、アイコンタクトは避けたほうがいい」と主張しています。
たとえば、取引先との交渉で、相手にとって都合の悪いことやマイナスになる問題などを話題にする場合、いつもよりアイコンタクトを控えるようにすれば、相手に不必要な緊張感を与えにくくなり、敵意を軽減させることもできるというわけです。
視線を合わせないことで交渉相手の緊張を緩和し、反発を抑制するというテクニックは、さまざまなシチュエーションでも応用できるテクニックです。
黒崎の場合は、相手を追いつめるために「視線」テクニックを使い、緊張感とプレッシャーでがんじがらめにして必要な情報を話させる。それが視線を利用した彼の「尋問」スタイルなのです。
次に、そんな黒崎スタイルとは正反対だと言ってもいい、半沢の交渉術の特徴を探ってみましょう。