合わないと感じたら会社から4000ドルキャッシュバック?
――採る側、採られる側ともにハッピーな「採用基準」
南 これまでのお話を聞いていると、そもそも誰を仲間にするか、すなわち採用が重要なんだなと。そこを外すとすべての根底が崩れてしまうような気がしました。取材された会社の仲間集め、採用に対する熱量はいかがでしたか?
本田 人を採るということに関して、とてもこだわっているよね。それでもまれに、「採ったけども合わない」ということが起こってしまう。ただ、そういう場合は、必ず採用された側も「なんか違う」と感じている。
そこで、たとえばザッポスの場合、長い研修期間中に本人がちょっとでも違和感を持ったら4000ドルもらえたうえで辞められるという制度がある。合わないという状況は、会社と本人、両方にとってもハッピーじゃないよね。だから、大きなお金を払ってでもアンハッピーな状況を防ごうとしているんだ。
南 採用は会社によって全然やり方が違うし、採用に対する経営者のマインドも、会社によって違うように感じます。僕の場合、最近は仕事時間の半分を採用に費やしています。その結果、人が辞める理由は2パターンしかないとわかってきました。1つは、会社側が求職者の期待値に答えられなかったパターン。2つめは、会社側に見る目がなくて、求職者が実力を盛って入ってきてしまい、話と全然違うというパターン。
前者は、採用時に会社のありのままの姿を伝えずに、情報を盛ってしまったことが原因です。すべてを正直にお伝えするしか解決法はなく、会社側が気をつけるべき問題です。
しかし、後者の場合はどうやって採用の精度を上げていけばよいかと試行錯誤するしかありません。僕、1年で2000人ぐらい面接してるんですよ。毎年2000人と面接してきた結果、顔つきと話し方でわかるほどに精度が上がってきたと自負しています。さきほど“人の空気感”という言葉が出ましたけども、本当に同感で、採用経験を積んでいくと「この顔、この雰囲気はウチの会社じゃない」ってわかるようになるんです。言葉にしづらいのですが、英語で言うところの「バイブス」かな。
本田 それはある。どこの会社に行っても、その会社なりのバイブスは感じるね。明確に表現できるものではないけれど、絶対にそれはある。
『あたらしい働き方』で取材したIDEOの社長は、いい人が採用できれば勝てるって断言するわけ。だから、採用に対してこだわらなければいけない。彼の場合はさらに突き抜けちゃってて、他の有志とともにスタンフォード大学d.Schoolというのを立ち上げてしまった。ここではクリエイティブな発想の人間を育てるために、IDEOの考え方や仕事のやり方、モノづくりを授業で教えているんだよね。もともとは小さく行われていたプログラムなんだけど、今はかなりいろいろなところから注目されている。
その結果、IDEOの社員はスタンフォードの教え子が多いんだって。いい仲間を集めることにこだわると、育てるというフェーズにまで行きつくっていう好例だね。
→後編(9月13日公開)は、2人が考える“ナイスな仲間”のつくり方をひもといていきます。お楽しみに!
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