「生活保護という制度があるから甘えて働かない」に対しては、「そもそも、働きたくても働くことの困難な人が多い」「働きたくても、その人が就くことのできる仕事がない」の2点を指摘しておきたい。たとえば、「働けるのに働けない」の代表例とされている「その他の世帯(世帯主が稼働年齢、障害者でも傷病者でもなく、母子世帯でもない世帯)」では、世帯主の概ね半数が50代・60代であり、概ね30%程度は障害・傷病を持つ家族を抱えている。高齢化問題であり、介護問題である。

 一般低所得世帯との不公平感に関しては、感じ方の問題ではなく、実際に不公平が存在することを筆者も認める。しかしその原因は、生活保護当事者たちでもなければ、生活保護基準が高すぎることでもない。最大の問題は、所得税の基礎控除額(単身者で38万円)が低すぎることにある。基礎控除は「税を徴収するにあたって、健康で文化的な最低限度の生活を営むのに必要な費用は残す」という目的で行われる控除であるから、基礎控除額が生活保護基準より低いことは問題である。基礎控除額が都市部の単身者で150万円程度になれば、現在指摘されている「不公平感」の多くは解消する。

 生活保護を利用していない一般低所得世帯が、生活保護によって守られているという側面もある。低所得世帯向けの支援制度の多くは、「所得が生活保護基準の1.3倍」のように利用の可否が判断される(本連載「政策ウォッチ編」第16回参照)。就学援助をはじめとする数多くの制度の利用が、生活保護基準引き下げによって困難になる。いくつかの自治体の試算により、実際に対象者が減少することも指摘されはじめている。たとえば9月14日の北海道新聞には、以下のような報道があった。

生活保護費基準額引き下げ  就学援助 469人対象外 市教委試算
 
 定例釧路市議会は13日、一般質問を続行。8月から引き下げられた生活保護費の基準額によって認定が決まる就学援助について、千葉誠一教育長は現在、対象の2180世帯3209人のうち、制度の移行が終わる2016年度には311世帯469人が不認定となるとの見通しを明らかにした。

 小、中学生の学用品や給食費などのために支給される市の就学援助は収入が生活保護基準の1.2倍未満の世帯が対象。1世帯につき、年間約12万円が給付されている。認定世帯数の削減を避けるための制度見直しに、千葉教育長は「他都市の動向を踏まえながら、どのような形がよいのか研究していかなければならない」と述べた。宮田団氏(市民連)への答弁。

その他の施策との間に
矛盾点はないか

 今回の生活保護法改正案は、政府が推進しようとしているその他の施策と矛盾する内容を含んでもいる。10月15日の閣議では、

「障害者の権利に関する条約の締結について国会の承認を求めるの件 」

 も検討された。2006年に国連で採択された障害者権利条約の批准は、以後ずっと、日本の課題でありつづけている。2013年6月に成立した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(2016年施行)」は、障害者権利条約の批准に向けての一歩でもあった。