働き方の多様化で住民トラブルも
「悶える職場」があなたの隣家に
今回は、賃貸マンションの一室に引きこもり、自宅で契約の仕事をしていると思しき30代後半の男性が織り成すトラブルを紹介しよう。その部屋の隣に住む、30代半ばの男性・A氏から話を聞いた。A氏は、ファイナンス系の会社に勤務する会社員である。
その「契約社員」は、毎晩ひどい騒音を立てる。それに不満を持つ住人がいる。その1人が、今回怒りを露わにするA氏だ。A氏は得体の知れない騒音に苦しめられ、眠ることができない日々が続く。
半年ほど前に不動産管理会社に苦情を言い、「契約社員」に「騒音をやめるように」と伝えてもらった。だがその後、一向に状況は改善されない。依然として毎晩、騒音、轟音、爆音が響いてくる。困り果てた住民たちは転居をするようになったが、A氏は安易に今の部屋を離れたくないという。「契約社員」のことを許せないようだ。
職場に「悶え」の構造があることは、これまで述べてきたとおりだ。現在はビジネススペースが拡大し、これまで会社で起きていた人間関係のトラブルが家でも発生する可能性がある。
今や、仕事は必ずしも「会社でやるもの」ではなくなっている。パソコンをはじめデジタル機器を揃えれば、社員が自宅で仕事をすることも可能となった。その時々の都合によって、会社での作業とそれ以外の場所での作業を、自由に使い分けて働くこともでき得る。
そうしたなか、契約・請負形態で働く非正社員などが増加し、自宅で仕事をする社員もいるだろう。仮に隣人がこうした業務形態の人であるならば、彼らが引き起こすトラブルは、会社には規制できないことがある。
今回紹介するエピソードは、そんなケースの典型例。A氏に話を聞くことで、新手の「悶える職場」の一断面を浮き彫りにしたい。
なお、この男性が本当に引きこもりに近い生活をしているのか、また「契約社員」であるのか、そうだとしたら家でどの程度の仕事をしているのかは、定かではない。あくまでA氏の見立てである。筆者はこれから、取材に応じてくれたA氏の主張をベースに論を展開していくことを、予めお断りしておく。