合言葉は「6割GO」
学校改革において私たちが常に意識してきたのは、スピードです。生徒のためにいいと思ったことは、すぐに実行に移してきました。
学校は、大切なお子さんを預かる場所ですから、何事も慎重に進める必要があります。
教員側から見ると、急ぎすぎて問題が生じるより時間をかけてじっくりと準備をしたほうが安心です。
けれど、生徒から見るとどうでしょう?
新しい取り組みを次年度に先送りした場合、いまの生徒に恩恵はありません。
成長期の生徒にとって、その1年は二度と戻ってこない貴重な時間です。
そのタイミングでしか吸収できないこともあるのです。
ですから本校では、安全性だけはきちんと確保したうえで、6割くらい準備ができたらチャレンジしてしまいます。
本校では、「6割GO」が合言葉です。
たとえば、中3の修学旅行。
体験型の旅行にするため行き先をイギリスからニュージーランドに変えた最初の年のこと。生徒全員が数日間のホームステイを体験し、大変好評で、翌年も6泊8日の旅程で準備を進めていました。
そんなとき、学校に遊びにきていた卒業生たちに、たまたま「在学中、役に立った行事は何?」と尋ねたところ、口々に「語学研修」という答えが返ってきました。
語学研修は、修学旅行とは別のプログラムです。
別途費用がかかるため、参加者は全体の1~2割だったのに、「よかった行事」に挙げる子の割合が高いことに驚きました。
数日後、職員室で立ち話をしていたらこの話題になり、
「もっと多くの子に体験させたいよね」
「費用の問題がネックだね」
「では、修学旅行と語学研修をドッキングさせるっていうのは?」というアイデアが出ました。
修学旅行の費用のほとんどは渡航費です。
希望者をそのまま滞在させて語学研修のプログラムを受けられるようにすれば、その分が浮くというものです。そのことで多くの生徒にチャンスが広がります。
ただ、この案が出たのは年度の途中であり、旅行会社への予約、費用の積み立てなど準備は半ば終わっていましたので、次の年度の可能性として検討することにしました。
ところが、調べを進めていくうち、もしかすると最短で前倒しできるかもという絵が見えてきました。
日程変更に伴う調整は大変なことでしたが、当該学年のスタッフは前向きでした。
「生徒の将来のために大きな意義がある」という一点で実施を決め、旅行会社や航空会社も、異例の協力をしてくれることになりました。
そこで、保護者の皆さんに緊急の説明会を開きました。
説明会前は、「急なので反対が多いかもしれない。それであれば次年度から」と思っていました。
しかし、結果的には9割以上のご家庭が、オプションの語学研修プログラムを選ぶことになりました。
なかには、うちでも語学研修が受けさせられると、涙を流して喜んでくださったお母さんや、「ぜひ行きたいので、自分の貯金も投入します」という生徒もいました。
ありがたかったのは、オプションを選択しなかった親御さんや生徒から、反対が出なかったことです。
「うちは都合で行かせられないけれど、学校の考え方には賛成です」と言ってくださる方もいました。
本校がいまも「6割GO」の精神で前に進めるのは、こうしたご家庭の理解があるからです。