アベノミクスにおける
政策的「矛盾」とは?

 近代の消費税は第一次大戦中のドイツに始まり、1920年代に欧州各国が導入しました。欧州各国では、10~20%の高い消費税を課す一方で、食料品などの生活必需品には5%程度の低い税率を課し、低所得者への負担を軽減しています。これを軽減税率といいます。アメリカでは、消費税の代わりに売上税が多くの州で導入されています(最高10%)。

 日本における消費税3%の導入は、竹下登内閣のとき(1988年)です。バブル経済の最中だったので景気に影響はなく、むしろ過度のインフレを抑制する効果が期待されました。

 バブル崩壊(1991年)後、5%への引き上げは橋本龍太郎内閣のとき(1997年)ですが、消費税と公共事業削減という2つのブレーキを同時に踏んだため、15年続くデフレ不況に突入しました。

 15年後、「デフレからの脱却」を公約して政権の座に就いた第2次安倍政権(2012年~)は、積極的な経済政策(アベノミクス)を打ち出しました。

アベノミクスの柱である日銀の金融緩和(円の増刷)と国土強靭化(大規模公共投資)は、政府の資金を民間に移すデフレ対策です。この結果、株価も賃金も上昇を始め、2020年の東京五輪招致も決まって明るい雰囲気になりました。

 その一方で、5%→8%(2014年)→10%(2015年予定)の消費増税は、民間の資金を政府へ移すインフレ対策です。アクセルを吹かしながらブレーキを踏むということですから、政策的に矛盾するわけです。橋本政権の轍を踏まぬよう、慎重なかじとりが必要です。

(次回掲載は、未定です)


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