「発達障害」という言葉自体をなくしたい

 Leafという学びの場があるということを知らせるために、「発達障害」という言葉をまだ一部で使っていますが、本当はその言葉自体をなくしていきたいのです。もちろん子どもに伝える必要もないと思います。だって、他の子どもとまったく同じように「発達」する必要なんてないからです

 でも親御さんの中には、「他の子と同じようにしてください」と、自分の子どもに問題がある、というふうに思っている方もいらっしゃいます。僕はそこが教育の問題点の1つだと思うんです。

 みんなと一緒に同じことやれるほうがいい、普通がいいという。親御さんの認識を変えていくというのがすごく大切だと感じています。つまり、親の目標設定のしかたが間違っていることが多いので、そこを変えていくということです。
 仕事も同じですよね。上司、部下ともに一番苦しいのは、目標が間違っているときです。子育ても同じです。

 「他の子と同じようになる」というのが目標ではなく、この子にはこの子にあった目標設定があるということをまず親が理解して、自分の子どもにあった目標を見つけることは非常に価値のあることだと思います。

人よりも得意なことを伸ばす場も必要だと思っている

―――さらなる学びの場として、ITを使ったものづくり教室、「Qremo(クレモ)」を展開しています。

 Leafでの子どもたちとの出会いを通じて、子どもの興味関心を大切にしていくことの必要性を強く感じました。そこで、勉強・運動以外にも多様な選択肢と生き方を選べるよう、ITを通じたモノづくりで遊びながら学ぶ、新しい学習塾を作ろうと思い、できたのが「Qremo(クレモ)」です。プログラマーからクリエイターまで広く横断的に「つくる」人材を育成していくのを目標としています。

 脳科学者の茂木健一郎さんは、ある対談記事の中で、「熱中することによって自然と他の能力も上がる」とおっしゃっています。茂木さん自身は蝶が大好きで、小学生のころから蝶の学会に入っていたそうです。蝶の研究を続けることで、学校の勉強もできるようになったと。自分の好きなことにのめり込むことで、他も伸びていく。そのほうが楽しいし、効率的ですよね。

 僕らが大人になってからのプロセスも同じです。目的があって、そのために数学が必要だから学んでいける。子どもたちの心に火を付け、学びへの意欲をかきたてることができたら、後は自分たちで勉強してくれるはずです。そういう教育のスタイルに切り替えていきたいのです。

 Qremoでは子どもたちがプログラミングや3Dプリンターでものづくりに取り組んでいますが、子どもの興味関心を元に「つくりたい」という気持ちを引き出して授業をしているため、お年玉を使って通ってくる子どもがいたり、好きなサッカーをやめてQremoに通うという子どもたちまでいます。そうした学びが将来での活躍にもつながっていくと私たちは思います。

 実際に、子どもの趣味関心を追求した結果、生まれた仕事はたくさんあります。プロスポーツが多様化しているのもそうですし、モノをラインストーンなどで飾るデコアーティストなども子ども時代からの興味がそのまま職業になったものです。

 ほかにもYouTuber(ユーチューバ-)といって、YouTubeでの広告収入で生計を立てている人もいます。YouTuberとして日本で2番目に稼いでいる友人がいるのですが、パズドラ(パズルアンドドラゴン)というスマートフォンのソーシャルゲームにのめり込んで、それが今の活躍にもつながっている。

 ちょっと前まで、オタク的な子どもは親から心配されてきましたが、今はなんとなく「オタクのほうが成功できるのではないか」という雰囲気もあり、だいぶ変わってきたように感じます。人の個性を伸ばした結果、新しい職業誕生につながり、社会の多様性が加速的に促進させる。そんな時代になってきていると思います。