「自己信頼感」がないと、
ちょっとしたことでつまづく
精神障害といわれている方のうち、肌感覚ですが、3割くらいは発達障害の傾向があります。アスペルガー症候群やADHD(注意欠如・多動症※DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン 最新のガイドラインによる)的なものです。個性がユニークな方が多いのが特徴です。
彼らがその個性を認めてもらえずに、結果的に精神疾患を発症してしまうということが多いように思います。共通するのは、とても低い自己信頼感です。この「自分を信頼するという土台」がないと、何か問題が起こると立ち直ることができないほど落ち込んでしまう時があります。
たとえば仕事の失敗や人間関係での困難など、人生の中で誰もが経験することでも、本人にとっては重大なことで、ものすごい不安に襲われてしまうのです。自己信頼感という土台があれば、そこまで落ち込まなかったかもしれません。他人から見たら「大きな失敗」でなくても、会社に行けなくなったり、精神的にダメージを受けてしまったりするケースが多いのです。これは就職支援の活動を通して気づいたことです。
だた、自己信頼感をつくるということは、口で言うほど易しいことではありません。対処療法的な対策はかなり時間を要します。やはり幼いころからの教育に、その鍵があると思うのです。
現在の学校の環境は、学び方がみんなと違う子どもにとって非常に厳しい環境です。勉強が分かっていないのに、他人の邪魔をしないよう、だまってじっとしていてくれといわれます。毎日、授業のある1日5~6時間、トータルでいえば、義務教育の何年間もの間、それを強要されるようなそういった環境にいれば、自己信頼感などつくれるはずがありません。
ただ、子どもはその苦しさを表現できずにだまっていたり、「頭が悪いんだ」と自分を責めたりしてしまうのです。
個性を認めてあげることが
「自己信頼感」を育てる
――― Leafの生徒数は約4000名もいらっしゃると聞きます。どのようなお子さんが通われているのですか?
実は、いわゆる発達障害の診断があるとされる子どもたちは全体の3割くらいです。あとは、大きく言えば、現在の枠組みに入らない子どもたちです。既存の学校や塾がフィットしないために、Leafにたどり着いたという子どもが多いのです。
発達障害といわれる子どもでも、生徒たちの状況はそれぞれ違います。
Leafの授業はオーダーメードなので、子どもの個性を尊重してもらえるからと、遠方からも来ていただいています。
たとえば僕が大好きな生徒にB君という小学校1年生の男の子がいます。お母さんのお悩みは、B君が子どもと話せない、ということ。でも大人と話すのは上手なんですよね。
ある日、B君が新しい服を着ていたので、僕が「かっこいいね」と声をかけると、「うん、買ってもらったんだ」と。「気に入ってるんだね?」と話を続けたら、「まー今日初めて着るから、まだ気にいってるかわからないんだけどね」って。小学校1年生なのにこの冷静な回答(笑)。
B君は小学校に入学して1週間で、「二度と学校には行かない」と言ったそうです。今は、週に2回くらいLeafに通っています。彼は音楽家になるためにバッハの研究をしています。バッハが死ぬ直前に考えていたことを知るというのがテーマだそうなんです。小学校1年生になったばかりの子がそんな研究をしているんです。
B君もそうですが、その人その人に合った学び方、ペース、方法があると思います。視覚、ビジュアルで学ぶのが得意な人もいれば、耳から学ぶのが得意という人もいます。
僕自身も、小さいころは先生がぱっと説明しただけではまったく理解できない子どもでした。いつも「本質的にはどうなの? 根本的にどういうこと?」と考えてしまうので、すぐには理解できないんです。でも、本質を捉えたら、後の応用力は人よりも優れているということが、仕事を始めてから分かりました。でも、学校にいるときには、皆と同じペースで学ぶことができずに、すごく焦っていたんです。
根本を理解したら応用が強いとか、何度も聞けばすごく理解できるとか、学び方は人それぞれです。その子にあった学ぶ環境があれば、みんなできるようになっていくと思います。