世界の鉄道車両メーカーに
ついても詳細に記述
しかし、厳しい条件によって精密で安定した運行技術が発達しました。
現在、高速鉄道を保有している国の中で、当初から自国で高速鉄道システムを開発しているのは、日本とフランス、ドイツ、イタリアの4ヵ国だけであり、残りの国々は、これら高速鉄道先進国のシステムを導入して高速鉄道を実現した。大雑把に分類すると、スペインはフランスとドイツ、ベルギーとイギリス、オランダ、韓国はフランス、台湾は日本、中国は日本とフランス、ドイツ、ロシアはドイツの高速鉄道技術をもとにしている。/近年では、高速鉄道の技術移転により、スペインや韓国、中国も海外の高速鉄道プロジェクトに参入する意欲を示しており、例えばトルコの高速鉄道にはスペインの車両メーカーCAF社が高速電車YHTを納入している。(20ページ)
日本の新幹線システムの納入先は台湾だけで、中国へは技術移転が行なわれました。北米、南米、東南アジア、中東など、高速鉄道計画のある国に対して官民あげたセールスがときおりニュースになるのは、このような実態が反映していたのです。
おそらく、延長距離はスペインに抜かれて3位になるでしょうが、当分のあいだ世界一の地位を日本が守ると思われるのは、東海道新幹線の輸送密度で、なんと1日当たり22.0万人を運んでいます。これ以上の路線を持つ国は出現しないでしょう。
実際に車両や運航システムを製造販売している日本と欧州企業について、本書は詳細に解説してくれます。日本は5社、欧州は3社です。
現在、鉄道車両メーカーにはビッグ3と呼ばれるヨーロッパの三大メーカーがあり、かつてはこの3社だけでシェア50%を上回っていた時期もあった。しかしながら、現在では中国メーカーの急成長があり、シェアにおいては中国政府系の2社、中国北車集団と中国南車集団の2社が売り上げシェアトップを記録している。(82ページ)
シェア1位と2位が中国の2社で、欧州3大メーカーのシーメンス(独)、ボンバルディア(加)、アルストム(仏)3社の売上はそれぞれ1兆円前後でしょう。中国の2社はそれぞれ欧州各社の2倍程度の売上になるはずです。ボンバルディアはカナダの企業ですが、鉄道部門の本社はベルリンに所在します。
日本では日立製作所が最大のメーカーですが、欧州3社に対して大きな差があります。けっしてグローバル・プレーヤーではありませんでした。しかし、近年はイギリスの高速鉄道の更新事業を獲得し、本格的な欧州進出を果たしています。
2014年夏ごろから、日立はイタリアのフィンメカニカの鉄道・信号事業部門を買収する意向を明らかにしています。中国企業と競合しており、まだ結論は出ていないようですが、もしイタリア社の買収に成功すると、日立は欧州ビッグ3各社の半分程度まで売上が増え、世界で6位になるでしょう。
日本の新幹線は50周年ですが、グローバル市場への進出はこれからだということがよくわかります。