税理士は税金の専門家です。納税する人から委託を受けて、その人の代わりに税務署などへの申告・申請を行います。また、法人税や所得税、消費税、相続税など、税金に関するお客様の個別事情に応じた相談を受けることは、税理士でなければできません。

では、相続時に、相続人は何を期待して税理士にお願いするのでしょうか。もちろん、煩雑だと思われる手続きを委託することもあると思います。一番のニーズは、仮に相続税を払う場合、「節税できないだろうか」です。ただし、節税の場合は、不動産の知識と経験が必要です。仮に払う必要がないとわかったとしても、分割案を期待したいところ。さて、今回紹介する事例から何が学べるでしょうか。ポイントは「期間」です。

申告が必要な人は4.2%。ほとんどの人は必要ない

 国税庁の発表では、2012年(平成24年)度に亡くなった方は約126万人、このうち相続税の課税対象となった方は約5万2000人で、課税割合は4.2%(2011年〈平成23年〉4.1%)となっています。ほとんどの方は相続税の申告も不要で、税理士に頼む必要はありません。2015年(平成27年)からの相続税の改正によっても、課税対象者は4.2%から6%程度に増えると試算されていますが、まだ、その程度なのです。

相続実務に慣れていない税理士が大半

相続税の申告が必要な方が5万2000人だというのに、税理士会連合会が公表している税理士の登録者数は7万4000人を超えているのです(2014年11月現在)。税理士1人当たりの相続実務は0.7回となります。この数字は、1年に一度も相続税の申告をしない税理士がいることを表しています

 最近は、資産税に特化した、または相続を専門にしている税理士法人もあり、そうしたところは、相続税の申告だけでも年間200件、300件、400件とまとまった数の申告をされています。となると、多くの税理士が、相続税の申告を1年に1回どころか、数年に1回程度とか、あるいは、まったくしたことがないかもしれません。

 こうした事実から、依頼は税理士であれば誰でもいいわけではありません。税理士選びに失敗すると的確なアドバイスがもらえないばかりか、経験不足でうまくいかないこともあるのが現実なのです。