アベノミクスの経済政策として話題になった「3本の矢」。はたして効果はあったのだろうか? 景気回復がなかなか実感できない今こそ、政策の中身と狙いについて改めて考えてみよう。新刊『今までで一番やさしい経済の教科書[最新版]』の著者・木暮太一氏が、どんな経済オンチでも一発でわかるように解説する。

アベノミクスでは何をやっていた?

アベノミクス「3本の矢」って結局何だったの?木暮太一(こぐれ・たいち)
経済ジャーナリスト、一般社団法人 教育コミュニケーション協会 代表理事。慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・団体向けに「説明力養成講座(わかりやすく伝える方法)」を実施している。フジテレビ「とくダネ!」(木曜レギュラーコメンテーター)、NHK「ニッポンのジレンマ」、Eテレ「テストの花道」などメディア出演多数。『カイジ「命より重い!」お金の話』『超入門 資本論』など著書多数、累計120万部。

 今回は、アベノミクスの政策、つまり“3本の矢”である「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3つの作戦について解説していきます。

 あれ? 第1回2回3回で出てきた「金融政策」「財政政策」とは違う内容?

 いえ、同じです。ここが混乱を招くこところですね。結論から言うと「金融緩和」は「金融政策の一種」です。

「金融政策」には、景気を良くする「金融緩和政策」と、景気を落ち着かせる「金融引き締め政策」の2種類あります。アベノミクスでは、そのうちの「金融緩和政策」をやりますよ、ということなので、大きく言うと「金融政策」、細かく言うと「金融緩和政策」を実施しているということなんです。

 なるほどね、じゃあ財政出動は?

 これも同じです。財政政策にも景気を良くさせる政策と、逆に景気を落ち着かせる政策の2方向があります。そのうちの「景気を良くさせる政策」のことを「財政出動」というんです。

 話を戻しますね。安倍首相が掲げたアベノミクスという政策では、この「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3つの作戦を使って、景気を良くしようとしていました。

 っていうか、金融政策と財政政策って、普段やっている作戦と同じじゃない?

 あ、気づいちゃいました? そうなんです。いつもの作戦と同じなんです。“アベノミクス”という名前を付けているので、さも新しいウルトラCの作戦かと思いきや、(良くも悪くも)定番の政策を実施しているだけ、というのが実際のところです。

 ただ、普段の政策とすべてがまったく同じなわけではありません。“アベノミクス”にも特徴があります。

 特徴って、なに?

 大きな特徴は二つあります。一つは、「インフレ2%を目標!」と数値化させて明確にしたこと。もう一つは、「人々の期待に訴えたこと」です。

 インフレ2%? 期待に訴えた?? 全然わからないんですけど……。

 これだけではまったく意味がわからないと思います。一つずつ説明していきますね。まずは「インフレ2%を目標」についてです。