統合とはその名を借りたリストラである。それがついに動き出した。三越伊勢丹ホールディングスが、三越の不採算店6店舗を閉鎖することを決めたのだ。

 具体的には、池袋店、武蔵村山店、鹿児島店、名取店と小型店舗二店(鎌倉店、盛岡店)の合計6つの三越店を来年3~5月に順次閉店する予定だ。

 計画は数ヵ月前から持ち上がっていた。長く収益の低迷に苦しんでいた地方店、海外店、ショッピングセンターや空港に出店するサテライト店などが、閉鎖対象として俎上に載せられていたようだ。

 三越と伊勢丹が経営統合を発表したのが昨年8月のこと。

 今年4月の正式統合を前に、昨年12月には伊勢丹が小倉伊勢丹の撤退を公表し、百貨店業界関係者のあいだでは「自らが早々に不採算店からの撤退を示すことで、統合した暁には三越も不採算店を閉めるようにというプレッシャーだろう」と見られていた。

 三越伊勢丹ホールディングスは、2013年度に連結営業利益で750億円(08年2月期比で2.2倍)という高い目標を掲げている。

 中間決算を発表するこの11月には、まずは09年度からの3ヵ年の中期経営計画を公表する予定で、同時に閉鎖対象店舗を公表するだろうと目されていた。

 ただ、店舗閉鎖には1店舗当たり数億~数十億円の除却損がかかり、単年度での閉鎖は「難しいのではないか」(業界関係者)と見られていた。

 しかし今回、自社所有物件の三越池袋店を、不動産投資法人のシンプレクス・リートに来年9月末に750億円で売却することを決めたことで、各店閉鎖に伴う特別損失の穴埋めができる見通しだ。

 三越池袋店の帳簿価格は約570億円で、売却額との差額は約180億円にまで上る。

 百貨店を取り巻く経営環境は厳しく、特に地方店が収益の低迷に苦しんでいるのは周知の事実。リストラは必然である。

 ただ、伊勢丹側の主導に三越内部の抵抗や、地元の反発もあるといい、一筋縄ではいかないようだ。

 小売業は利益だけを追求していればよいわけではない。地元の人の生活や雇用面などで、地域経済を担うという使命を負っている。

 店舗を閉鎖するのであれば、店舗それぞれに対して、なぜ、その店の閉鎖が必要なのかという説明が必要なことは言うまでもない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 須賀彩子)