モチベーションの源

 フリーエージェント・スタイルで働く場合、個人のモチベーションが高く保たれていることが命綱になる。僕らの場合、それはどのようにして維持されているのだろうか。多くの会社では役職というものがあり、社員たちはそのシステムの中でより高い役職に「上がっていく」ことがモチベーションの一つの源泉になっている。

 それによって周りに一目置かれたり、イスが立派になったり、給料も上がって、立派な家が買えたりするわけだ。会社によってはもっと報酬によるモチベーションを強くとらえているところもあるが、基本的には「能力や成果」を「名誉とお金」に結び付ける方法だ。

 しかし考えてみれば、人のモチベーションを生むものはいろいろあるはずだ。原始人の狩りならば、今日のメシのためという極めてシンプルなものだったろうし(もしかすると、権力の誇示とか、モテたいとか、もあったかもしれないが)、逆に戦争では「お国のために」という、ある意味とても高度なものでモチベーションが生まれていた。

 僕らの場合、モチベーションを左右する特に重要なファクターは、「おもしろさ」と「納得感」である。「おもしろさ」は、自分が好きなものを見つけ、それを好きな人に伝えて喜んでもらうということ。とてもシンプルな話だ。好きなものを探し出す努力は、嫌いなものを探すよりずっとモチベーションが上がるのは当然だ。そしてここには、チームやお客さんといった周りの人間環境もおもしろいという意味も含んでいる。日常的に好奇心を刺激する環境で動くということだ。

「納得感」は、自由とフェアネスがあること。理不尽なことがない。がんばれば返ってくる。納得するまで議論できる。これがないと飲み屋でひたすらグチることになり、モチベーションはどんどん下がる。仕事をつくる自由がある以上、新しい仕事をしたいときにも「会社が異動させてくれない」という自分への言い訳ができないわけで、これも基本的な納得感につながってくる。

 そして個人の役割が「歯車」でないことも重要だ。お客さんに価値を届けるための、一定の一貫性のある役割を担うことによって、仕事の中身や評価への納得感は高まるのである。こうした構造がモチベーションを支えていると思う。