2020年に開催される東京五輪のメイン会場である新国立競技場建設が紛糾している。開閉式の屋根設置が難しく、五輪に間に合わない公算が高くなった。しかし、屋根を延期すれば問題が解決するかといえば、そう甘い話でもない。

「あんなの無理」
当初から予想できた茨の道

 5月18日、下村博文・文部科学大臣が突如表明した、新国立競技場の建設計画見直し。一番の難所と見られていた、開閉式の豪華な屋根の設置を五輪後に延期するほか、観客席の一部は仮設とすることを表明した。

斬新なデザインで開閉式という豪華な屋根が売り物だった新国立競技場。しかし、プロジェクトは次々とボロが出てきている 「提供:日本スポーツ振興センター」

「あんなの本当にできるのか?」「いや、今から急いで技術開発をすれば、なんとか五輪には間に合うかもしれない」――。

 そもそも、新国立競技場は、2012年秋のデザイン決定直後から、ゼネコン業界関係者たちが口々に疑問の声を上げるほどの難題案件だった。競輪選手のヘルメットのようにも見える、流線的で大胆なデザインの屋根は開閉式。この屋根が、技術的に非常に難易度の高い、くせ者だったのだ。

 デザインコンペは日本スポーツ振興センター(JSC)が実施。建築家の安藤忠雄氏が審査委員長を務め、イラク出身の建築家、ザハ・ハディド氏の案が最優秀賞に選ばれた。ハディド氏は「アンビルドの女王」と呼ばれたこともある人物。つまり、デザインが斬新すぎて、作るのが非常に難しいということだ。

 当初デザインでの総工費は約3000億円。さすがにカネがかかり過ぎるということで見直しを行い、14年5月の基本設計案発表時には、延べ床面積を縮小することで総工費を1625億円に圧縮することとなった。しかしそれでも、開閉式の屋根にはこだわった。