近年、アメリカでビジネスを展開している企業が揺れている。タカタ製のエアバッグがリコールの対象となるとともに、消費者から損害賠償を提起されるなど、クラスアクション(集団訴訟)の危険性が増しているからだ。しかし、日本企業の立場に立って数々の訴訟を戦ってきた、ライアン・ゴールドスティン米国弁護士は、「日本企業はクラスアクションをむやみに恐れないでほしい」と主張する。では、日本企業はクラスアクションにどう備え、どう対応すればいいのか?3回にわたって連載していただく。

裁判所が「クラス認定」のハードルを上げている

 今回は、クラスアクションの最近のトレンドをご紹介します。

 まず、企業にとって追い風となるトレンドからご説明していきます。
 クラスアクションには、「クラスの認定」というステップがあります。裁判所が、被害者の一部が全体(クラス)を代表する訴訟(アクション)であると認めて、はじめて訴訟が正式にスタートするのです。逆に、「クラスに該当しない」ことを被告企業が立証できれば、クラスアクションは未然に防げるわけです。

 そして、裁判所がクラスを認定する基準のハードルを上げているのが、近年のトレンドなのです。

 たとえば、こんな事例がありました。
 アメリカの大手スーパーマーケットの女性従業員が、賃金や昇進などで男性と比べ差別されているとして約150万人からなるクラスアクションを提起。賠償請求は数兆円という途方もない金額に上るとみられていました。かつて、同様のクラスアクションで「クラスの認定」を受けたケースがあったのですが、このとき、連邦最高裁はクラスアクションと認めるだけの共通性がないと判断したのです。

 これまで、「クラスの認定」は、原告側が「これから共通性を証明していく」と主張すれば認められるケースが多かったのですが、そのトレンドが変わったのです。

 もちろん、クラスアクションは、消費者を保護するという点でとても重要で優れた制度です。しかし、残念ながら、ビジネスとしてクラスアクションを起こす弁護士も少なくないのが現実。そのため、クラスアクションをむやみに利用するケースを抑制するために、ここ数年、裁判所は認定のハードルを上げているのです。また、損害額についても適正化すべく、厳しく吟味するようになっています。

 このように、「クラスの認定」が厳しくなっているトレンドは、企業にとって安心材料のひとつになると言えます。