脳の「実行機能」が大事な3つの理由
このたび、ダイヤモンド社から刊行された『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』の記事に、私の古くからの知り合いである、A.ダイヤモンドの論文を簡単に紹介しました。「ダイヤモンド」が繋がる面白い偶然を感じています。
脳の話をすると、脳の場所の名前や働きの専門用語が出てきて、内容がわかりにくくなるのですが、最近では、額のすぐ後ろにある「前頭前野」の機能も徐々に知れわたってきました。
しかし、「実行機能」はそうはいきません。一般の方にはなかなかなじみのないものです。
これは、前頭前野の働きをまとめていうときに使う脳科学用語で、うまく説明している脳の解説書にもほとんど出てきません。
A.ダイヤモンドは、2013年に「実行機能(executive functions)」という総説論文を年1回発行され、心理学者が読む「心理学の総説雑誌」である“Annual Revue of Psychology(心理学総説年報) ”に寄稿。「実行機能の定義」をこう書いています。実行機能で大事なのは下記の3つ。
1)自分の行動をうまくコントロールできること
2)ワーキングメモリー(短期記憶で前頭前野に保存される)の能力が高いこと
3)いろいろなことを柔軟に考えられること
自分自身を精神的、身体的に健康に保ち、学校や人生で成功する。また社会的、心理的発達のために、これら3つのことが本質的に必要なスキルであると考えているのです。そして、実行機能がよくできると、下記のようないいことがあるとしています。
<実行機能は生活のあらゆる場面で重要>
●精神の健康……以下の精神障害では、実行機能が阻害される:
――麻薬中毒、注意欠陥性多動症、行為障害、うつ病、強迫性障害、統合失調症
●身体の健康……肥満、食べすぎ、薬物乱用、悪い治療法の固執で実行機能が低下する
●生活の質……実行機能がよいと、生活の質がよくなる
●就学への準備……実行機能がよいことは、読み書きや算数ができることより大事
●学校の成績……実行機能がよいと、学校生活での算数・読み書きがよくできるようになる
●就職での成功……実行機能が悪いと、生産性が低くなり、よい仕事を見つけにくい
●結婚での成功……実行機能が悪いと、共同生活が難しくなり、突発的行動をするようになる
●公共での安全性……実行機能が悪いと、社会問題を起こしやすい(犯罪、無謀行動、暴力や感情爆発)