内部留保という滞りが解消され、
日本経済の歯車は回り始めた
村上 金融というのは血液みたいなもので、どこかがよどんでしまうと流れが悪くなって全体的な経済活動もどんよりしてしまいます。そして、今は上場企業の内部留保がお金の流れをよどませるポイントになっており、そういう認識を背景にコーポレートガバナンス・コードなどが打ち出されたと思います。
アメリカと日本の株式市場を比べると、日本の上場企業の時価総額は600兆円で純資産は400兆円。それに対してアメリカの上場企業の時価総額は2600兆円で純資産は800兆円。PERについては日本が17倍でアメリカが18倍とそんなに変わらないのですが、PBRを見ると日本が1.5倍でアメリカが3倍とかなりの差があります。
アメリカと比べると、日本の上場企業は純資産を200兆円くらい余計にもっていて、これが内部留保のうちムダに溜め込まれているお金に相当するのではないかと思います。
アメリカではROE革命がずっと進められていて平均15-16%の水準になっていますが、それが日本は8%くらいです。日本の上場企業の経営者の間では今まであまりROEという概念がなくて、それが急にクローズアップされてきて、じゃあこの内部留保をどうするかという局面になってきていると思います。
今、異次元緩和をしている割にはマネーストック(世の中に流通しているお金の量)がなかなか増えませんが、この内部留保として余分に抱えている金融資産の200兆円が有効活用されて世の中を巡りだすと、銀行借入れなども増えて、お金の流れがグルグルまわるようになってマネーストックが増え、やっと日本の経済がよくなってくるのではないかと思います。今回の一連のコーポレートガバナンス革命によってきっとそのようになると思いますし、われわれの活動もそういう中でできるだけ貢献していけたらなと思っています。
藤野 「内部留保」の問題は伊藤レポートでも強い問題意識でかなり切り込んでいます。やはり、これは企業のガバナンスが効いていない結果でもあり象徴でもある。ひいては、それが日本経済の潜在成長率の低下、さらに、財政や年金の問題などにもつながっています。いわば日本経済の問題の肝で、ここが適正化されれば日本経済はかなり大きく変わる可能性がありますし、一連のコーポ―トガバナンス革命により、日本を代表する企業が内部留保の有効活用を始めた、というのが現在の状況です。
(取材・文 小泉秀希、撮影 宇佐見利明)
後編へ続く