経営者の保身のための
買収防衛策はやってはいけないこと

村上 コーポレートガバナンス・コードについては特に株の持ち合いと買収防衛策について言及されている点が極めて重要だと思っています。どちらも合理的な説明がつかないものについてはNOだということです。

藤野 スチュードシップ・コードのインパクトも大きいですね。「物言う株主」とか「アクティビスト」というと日本では悪い印象で捉えられてしまいますが、株主が企業を監視して、企業に対してきちんと意見を言ったり議決権を行使することは当たり前のことだし、機関投資家と言われるプロの投資家の人たちにとってはそれが義務でさえある。スチュワードシップ・コードはそのことを明確に示しています。

村上 機関投資家が上場企業の買収防衛策に賛成するということは本来あってはならないことだと思うんです。上場企業は株主を恣意的に選ぶことができないのが基本原則で、買収防衛策っていうのは望まない相手には株を買ってはいけないよという、結果的には現在の経営陣の保身になっているケースが多々あります。

 買収防衛策を導入した企業は株価が低迷しがちですが、本当は一番の買収防衛は株価を高くすることなんです。シンプルに株主の目線にたって経営をしていくことです。しかしこれまで日本の機関投資家はなぜか買収防衛策の導入議案に賛成していました。

 けれどスチュワードシップ・コードでそうした状況も変わってきています。たとえば、弊社の投資先にヨロズという自動車部品会社があります。ヨロズには買収防衛策が導入されていて、前回の株主総会でもその継続が議決され、結局は可決されたんですけど、賛成と反対は58対42くらいでほぼ拮抗するようになってきた。

 同社は持ち合い株がすごく多くて賛成の58の大半は持ち合い株でした。一方機関投資家のほとんどは反対に回りました。

 やはり、経営者の保身のために買収防衛策を行使して、株価を低くするという行為は絶対にやってはいけないと思います。そういうことが平然と行われてきたのですが、やっと最近になって風向きが変わってきた。

 このような株式の持ち合いについてもコーポレートガバナンス・コードがメスを入れているので、今後状況はさらに変わると思います。

大塚家具の株主総会で久美子さんが勝ったのも
スチュワードシップ・コードのおかげ

藤野 大塚家具の件でも、株主総会で事前の票読みではお父さんの方が勝つだろうという下馬評だったんですよね。それを覆して、なぜ久美子さんが勝ったかというと機関投資家が全部久美子さん側についたからです。

 ISSという機関投資家向けの議決論行使助言会社が、久美子さんの案の方が企業価値を上げるとの判断を示したからです。以前なら機関投資家は「お世話になっているから」ということでお父さん側に票を入れることになったかもしれませんが、スチュワードシップ・コードが発動されて以降は、経済合理性を欠いた議決権行使をすると受託者責任が問われるようになってきたのでそれができなくなった。つまり、議決権行使の賛否の理由をきっちりと説明する義務が生じているということです。

 このように、機関投資家も株主提案について、合理的に判断しなくいけなくなってきたことは、村上さんの活動にとっては非常に追い風になっているんじゃないかと思います。

村上 それはその通りですね。

藤野 さらに、今回、金融監督庁だった森さんが金融庁長官になり、彼は金融業界や上場企業に関する改革を一段と推し進めようとしています。ここからさらに激しい変化が起きそうだなと僕は業界の人間としてワクワクしています。おそらくここから5年、10年で証券業界や資産運用の世界は大きく変わるでしょう。