広瀬 その粉飾も、化けの皮が剥がれてきました。
 フランスの原子力総合企業・アレヴァは4年連続の赤字を続け、2014年に6700億円の膨大な損失を記録し、実質的に経営破綻して大量解雇の方針を打ち出しました。
 フランスの原発比率はすでに現在75%に下がりました。今後10年で58基のうち20基を廃炉にする計画です。

吉原 日本でも東芝の粉飾決算はひどいものです。商法違反の堀江貴文さんが2年6ヵ月の懲役ですから、東芝の罪はさらに重いはずでしょ。しかし、小物は捕まったけれど大物は捕まらない。おかしな世の中ですよね。

広瀬 その東芝で粉飾決算の原因になったのが原発ですからね。

吉原 2006年に、東芝は当時社長だった西田厚聡前相談役の「選択と集中」の号令のもと、半導体と共に、原子力を事業の2本柱に位置づけました。
 アメリカの原子力大手ウェスティングハウスの買収は、原子力事業に投資を集中させる目玉中の目玉でした。

 でも、この買収は、当時から「高値づかみ」の見方が強かったのです。
 なにしろ、三菱重工に2000億円で売るはずだった会社を東芝は8000億円で買ったのですから。ウェスティングハウスを売りつけたロックフェラー財閥は、笑いが止まらなかったでしょうね。

 しかし、福島第一原発事故で原発事業計画の見直し機運が高まり、想定していた新規受注が難しくなりました。

広瀬 オリンパスが「飛ばし」という手法で巨額の損失を10年以上にわたって隠し続け、不正な粉飾決算で処理していた事件がありました。
 電力会社もあれと同じです。原発を廃止すれば、彼らは原発資産の特別損失を計上しなければなりません。つまり、電力会社が過去に原発にのめりこんだ失敗によって自ら生み出したのが、その損失です。

 この損失を隠すために、電気料金の値上げで消費者を恫喝し、無用で危険きわまりない不良資産の原発を再稼働できる資産に見せようとしているだけなのです。ここにきて、顧客の企業が次々電力会社離れを起こしています。いいことです。

 さらに、2016年4月1日から実施される電力の完全自由化によって、電力会社が7割の利益を上げてきた家庭用でも選択が可能になります。
 東京電力管内では、38%の消費電力の一般家庭から91%の利益を得てきたのですから、来年からは、50%以上の利益が吹き飛びます。

 つまり、われわれが契約を電力会社から新電力に切り替えて、新しい産業を味方につければ、この勝負は勝てます。電力会社が打てる手は、電気料金値上げしかない。すると、ますます企業が電力会社離れを加速します。その結果、電力会社は、存亡の危機に立たされますよ。新電力への契約切り替えを、どんどん呼びかけましょう。

 電力会社は原発に見切りをつけない限り、膨大な数の顧客を新電力に奪われ、ますます経営が悪化し、経営破綻に追い込まれるでしょう。

吉原原発を廃絶して、特別損失で困るのは電力会社だけです。しかし彼らも、もうそろそろ頭を使って、未来を考えるべきだと思いますがね。原発をやめるなら、われわれも電力会社に味方してあげられるのに……。

広瀬 そうですよね。

 次回は、信用金庫と銀行の違いと、再稼働、安保、TPP……と亡国へ導く安倍晋三の本当の罪について、お話ししましょう。

 

原発とは、国家ぐるみの<br />壮大な「粉飾決算」である。<br />――吉原毅×広瀬隆対談【パート3】

(つづく)